突然の来客の効き目


 先日、突然劇団のメンバーがうちに集まる事になった。通し稽古をビデオに撮って、帰りにうちでみんなで見ようというのだ。夜の9時半ごろシンフォニア岩国(ビデオを収録したホール)を解散して、10時ごろみんながうちに来た。

 最初はトキちゃんの家に集まろうか、という話だったのだが、最終的にはうちに来ることに。私はあわてて帰って片づけた。この時はたまたま掃除したばっかりだったので、バサバサっと片づけるぐらいでみんなを迎える事ができた。(みんなが後片づけをして帰ったのが12時半ごろだったので、他の家族がいる所では気兼ねである。うちを選んだのは正解だったと思う。)前に劇団のメンバーを招いて新年会をやった時は年末大掃除がまだ効いている時期だったので、家はキレイだった。うちに来たメンバーは「河村の家はいつもキレイだ」と思っているかもしれない。うちに来た友人たちもアパート時代を含め、「河村は家をキレイにしている」と言う。だが、アポとって来れば、普通、余計にでも掃除をしておく。私は今まで運よく、掃除してない家を見られてないだけなのだ。

 私はやる気のある時とない時の差がひどい。人前では「やる気のある私」「元気な私」を演じ続けられるのだが、家に帰るとしぼんだ風船のようになる時がある。もちろん、家に帰っても元気いっぱいで、木曜の夜中の11時ごろから換気扇掃除を始めたり、寝るが寝るまで掃除機持ったり鏡を拭いたりドタバタ走り回っている事もある。こういう時はまだいい。動き回っても疲れ知らずだし。

 問題は「しぼんだ風船状態」の時。平日、仕事から帰っても何もできない。ごはんは冷蔵庫にあるもので済ます。食べる気のあるときはまだマシで、何も食べない時もある。食べたら茶碗は流しに置いたまま。洗濯物はとりこんで居間に置いたまま。休みの日は朝から晩まで何をするでもなくゴロゴロしている。寝過ぎで頭が一日じゅうボーっとして、使い物にならない。こういう時、休みの日など、流しに丸一日分の食器がたまることがある。これでは次に何か作るにも身動きがとれないので、ここまでためるとイヤでも洗わなければならない。また、洗濯物もたたまないで、とりこんだ物から取って着る。これが何日も続くと、ハンガーやタオルを干す「タコノアシ」などがだんだん骨になっていく。私は「ズボラだなあ」と思う。しかし、そういう状況が嫌にもかかわらず、何もできない。やる気が出ないのだ。

 こういう時、突然の来客は逆にありがたい。がぜん元気が出る。今までやる気がなくて何日も放って置いた家事があっという間に片づく。これをキッカケに「しぼんだ風船状態」から抜け出せることがある。

 いくら何でも2週間も掃除機をサボれば、床にうっすらホコリがたまって、ガマンの限界を迎える。洗濯だって最低1週間に1回はしなければ着るものやタオルがなくなる。冷蔵庫の残り物だっていつまでもあるわけではないし、放っておいてもいつか元気な私に戻る。だが、一日も早く「しぼんだ風船」から抜け出したい。

 突然の来客の効果はだいたい2〜3週間は続く。効果があるうちは、誰も来る予定がなくても家はいつでもキレイだし、片づいている。そろそろ、この前劇団のメンバーが来た時の効果が切れかかっている。疲れているのもあるけど、家でちょっとダルダルになってきた。また誰か突然来ないかな…。

        

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