久々の人形作り


ステラ人形の写真 12KB 私かい?…そうだね、私はね…。

かれこれ猫の群れが息づいたときから、
ここでずっとこの街を見てきたよ。
この街で生まれ、この街の小さな、
そう、そのちょうど崩壊しかけたビルの角に
かつては小さな本屋があったんだ。
そこで飼われていたわけでもない。
かといって野良でもない、不思議な生活空間だった。

ある日ビルは立ち退きになり、私はここにたどりついた。
そして一冊だけ残ったこの本。
この本こそすべて。私の人生なのさ。

ミュージカルが終わって、久しぶりにちょっと暇が戻ってきた。ミュージカルを始めてから、稽古のある日はテレビを見ていない。急に時間ができても10時前にテレビを見る習慣がなくなっているので、何を見ていいかわからない。ホームページの原稿も書かねばならないが、むしょうに人形がつくりたくなった。

きっかけはリーダーの店にあるデロリス人形。毎年知り合いの方が作ってくださるのだが、今年は魔女猫の役なので魔女人形。衣装の残り布をうまく使って作ってある。今年、私は衣装の残り布がかなり出た。私ならこんなにがんばって布を使わなくても楽勝で1体分とれるぞと思った。リーダーの人形はかなり工夫を重ねて頭が下がるほどうまく布を取っていた。

私たちの年代は、子供の頃フェルト手芸がはやっていたので、大なり小なり人形の1体位は作ったことがある。昔、フェルト人形をちょっと進化させた本を持っていて、それは顔や手をジャージで作り、髪の毛を毛糸で植毛、ボディをフェルトで作る本だった。日本髪の結い方とかかなり参考になる本だったのだが、人に貸したまま帰ってこなくなった。その本があれば頭の型紙が楽に取れる。キツネのように先がとがった顔は4枚で、人間の頭は確か3枚で構成されていたはず…。あやふやな記憶をたよりに頭用のジャージを切る。綿を詰めてみるとなんとか丸くなった。

次は手。ミトンのような形に縫ってひっくり返すと…。あらら、ジャージが厚いので指の股が表現できない。(家にあったジャージは昔使っていたのより随分厚かった)だが、足のかかとのように見えるので足に使おう。ということでもう一つ作ったが、同じ大きさにならない。後作った方が少し大きかったので、綿を抜いて少し縫い縮めた。

指の股が表現できないことがわかったので、手はただの棒にした。これは簡単だった。そこでハタ、と気がついた。「頭がでかい」。型紙なしにテキトーに作っていたので、部品の大きさがめちゃくちゃアンバランスなのだ。少なくとも頭は作り直しだった。頭を1から作り直した。最初のは形が気に入らなかったので、ジャージを切るところからやりかえた。2個目はなんとか形になった。

ボディを縫ったはいいが、最初から座っている人形は作ったことがない。立ち人形なら手足をまっすぐつければいいが、座り人形は、最初から座っている形につくらなければ倒れてしまう。足や腕のくりをハサミで切って、この位かな?とテキトーに縫って座らせてみる。座りが悪いので、もうすこし前に傾くように縫い縮めた。なんとか座るようになった。今日はここまで。毛糸が足りないので頭を植毛できない。明日買いにいこう。と思ったら夜中の12時を過ぎていた。ぬいぐるみはのっぺらぼうのハゲ頭ではあるが、なんとなく見られる感じになってきた。

次の日、毛糸を買いに行ったが、高い。一玉400円近い毛糸を人形の頭に植毛するのはもったいない。黄土色のが欲しいのだが、安い毛糸になかなか色がない。ワゴンを掘って掘って見つけた「並太」の黄土色190円。「中細」以下の方がきれいにできるがなあ、と思ったが、ワゴンに中細はない。しかたがないので並太とビーズ(目を作る)を買って帰った。

さっそく目をつけて植毛をはじめた。植毛は昔取った"篠塚"で、難なくできた。できあがってみると、並太毛糸が太かったのかやっぱり頭がでかい。なんだか「高木ブーの雷様」に似ているなあ、と思いつつ、メガネを作って完成。人形作りは20年ぶりぐらいだろうか。2日で作ったのが急ぎすぎなのか、とても疲れた。いくら型紙があるとはいえ、よく昔はこんなめんどくさい物を何体も作っていたものだ。

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