隣の部屋の怪


私はアパートに12年住んでいた。12年もいれば、いろんな事があるものだ。アパートの隣の部屋の住人もいろいろな人がいた。隣の部屋の住人は、不思議と1年もしないうちに引っ越していく。でも最後の住人(夫婦?)だけはかなり長続きした。とにかく不思議な人たちだった。

まずご主人と思われる人が謎。たまーにしか帰ってこないかと思えば、毎日帰って来ることもある。毎日いる時は小さな庭に植えたトマトに水をやったり、草を取ったりしていた。私が花に水をやる時間と重なったりした時は時々挨拶したが、よくわからない人だった。帰って来ないときは何カ月も帰って来なかったので、途中で忘れてしまって最後まで顔が覚えられなかった。

次に嫁さんと思われる人が謎。私が休みの日に洗濯物を干していると、出かけていく。2メートル先ぐらいに私がいるのに、こんにちわも言わない。私もあえて声をかけなかったのでそれはいいとして、嫁さんは庭に草が生えていても一切取ろうとしない。もちろん水もやらない。同じ棟の他の家は家の前の庭はきれいにしているので、草ボウボウはかなり目立つ。ご主人が長い間帰って来ない時など、誰も草をとらないので、草丈は50センチ近くになり草ボウボウ。ご主人が植えた物も草に埋まってしまっている。一切水をやらず、夏の日はガンガン当たるので、作物だけでなく草さえも枯れてしまった。ある時、リスかハムスターを飼っていたのか、隣の住人が捨てた敷き藁の中にひまわりの種が混じっていて、勝手に芽を出して花が咲いたのには驚いた。隣の人も驚いたことだろう。

次に不思議だったのは車の数。ご主人は時々車で帰ってきたので、免許を持っている。嫁さんは車が置いてあっても歩いて出かけることが多かったので、免許を持ってなかったのかもしれない。だが、隣の家の車は3台以上ある。2人しか住んでいないのに。同じような小さい車が多いので、用途によって乗り分けているのではないようだ。ご主人は車関係の仕事をしていたのか?。それにしては帰って来ない日、というか期間が多かった気がするが…。ご主人が帰っていれば、50センチにも伸びた玄関横の草を見逃すはずはないと思う。草ボウボウの庭がある日突然丸坊主になっていて「ああ、ご主人が帰ってきたのかなあ」と思った時が何度かあったし。

それにも増してヘンなのは、2階の音。隣の夫婦に子供がいる風はない。なのに夜中の2時3時に2階を走る音がする。2階は6畳が2間続きになっているのだが、それを12〜13歩で走り抜ける。走り回るのではなく、1回行ったきり、走り抜けるのだ。最初、家から出ないような小さい子が走っているのかと思った。うちも同じ造りなので試しに走ってみると、12歩で壁に当たる。ということは私と同じ位の身長の人が走っていることになる。子供の姿など1回も見た事ないし、隣に小学6年生位の身長の子供がいるようには思えない。ご主人はもっと背が高いし、嫁さんが一人で夜中に走るのもヘンだし、…ということは…

ざしきわらし…?

私の知らない、第三の住人が…。

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