内職の裏側


最近ハマっているのが「365日バースディテディ」という、クマのぬいぐるみがオマケについた菓子。半年位前に、テレビで「こんなのが流行ってる」みたいなコーナーで紹介されて次の日に店に行ったが、売ってなかった。(それもそのはず、中国地方の販売開始はこの5月22日だったので、あるわけがないのだ。)

それ以来、このテディの事は忘れていたのだが、ひょいと寄ったスーパーで山積みのテディを発見。「うわ、初めて本物を見た!。」まずは手始めに2個買ってみる。中を開けてみると、けっこうしっかりした作り。180円の菓子のオマケとは思えないほどよくできている。体長8センチのぬいぐるみなのにミシン縫製。顔は3枚はぎで立体的にできているし、縫い縮めてアゴにくぼみを入れるなど技が細かい。

「made in china」とあるので、中国で縫製しているのだろう。内職で一人が同じ柄のクマを何百と作っているのだろうか。作っているところを見たいものだ。
1.腹縫い、背縫い
2.左右脇縫い+手足挟み込み
3.頭部3枚縫い+耳と釣り紐挟み込み
4.綿入れ
5.頭と胴の縫い付け
6.目鼻の刺しゅう+アゴのくぼみつけ
主な工程はこんなものだ。一人で同じクマを大量に作るのなら、布の部品は工場で切り取った物が来て、縫製だけ手作業だと思われる。これだけ凝っていれば日本では1匹20円ぐらいは出さないと引き受け手がないだろう。中国では1匹いくらで請け負っているのか?。

内職の賃金はメチャクチャ安い。私は工作好きなので、子供のころから遊び感覚で母親の内職を手伝うことがあった。駅弁のお茶容器、破魔弓、恵比寿さんのクマデ、等々である。
1.プラスチック流し型から、フタと身を取り出す
2.プラスチックの尖った所をニッパーで平らに切る
3.ハリガネを通す穴をあける
4.持ち手のハリガネをつける
5.フタに身をつける
駅弁のお茶容器は上のような工程でできるのだが、25年位前で、1個1円なかったような気がする。業者の人は「なんで河村さん(母)はこんなに作業が早いんだろう」と思ったに違いない。実は家では母子3人が作っているのだ。早いはずだ。

破魔弓を作っていた時はお茶の入れ物から10年位後で、その頃には弟も参加する。弟がやったのは「金銀の鈴1万個をリリアンの紐でくくること」。夏休みでヒマだったのか手伝ったが、鈴のチリチリ言う音が耳について「鈴1万個はもう絶対やらん」と言っていた。1万個結んで500円位だった気がする。

製品の袋詰めを担当したときは、値札をつけるだけで売り物になる破魔弓が家にゴロゴロしていた。なんだかそれを見ていると、神社で破魔弓を買うのがバカバカしくなった。袋詰めをしていたのは、弓が2本入って飾りもたくさんついて、けっこう豪華な物だった。神社での売値は2000円ではきかないだろう。こんな物に何千円も払うのって…??。

また、クマデはおもしろかった。最高なのは、素焼きの陶器でできた恵比寿様に顔を自分で書くのだ。口や鼻の位置や烏帽子のしわ等デコボコのあるものは、あらかじめ焼き型にあるのでいい。でも目の位置はくぼみだけあって、目の感じとか頬の赤みなど表情は書く人にまかされる。そのため作りはじめて最初の数個はかなりブサイクなのだ。烏帽子の色とか口の色とかは色指定がある。同じ色の所をどんどん塗っていき、全部すんだら次の色にとりかかる。デコボコにそって塗ればいい所は塗りムラがある程度で、最初の作品でもまだ見られる。しかし目だけは筆で一発書き。失敗は許されない。最初は左右の目が同じように描けない。私の書いたヘタクソであまりありがたくない顔の恵比寿様が家にズラーっと並んでいる。「この恵比寿様のついたクマデ買う人はかわいそうだね。」

内職をしていなかったら何も思わなかっただろうが、今回のバースディテディにしても内職の裏側が気になってしかたがないのだ。ちなみに、かわいいクマさんはただいま増殖中である。

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