捨て魔の例外


うちは家が狭かったので、子供の頃に書いた絵や作文は全く残っていない。かろうじて写真と通知票、そろばん検定の賞状ぐらいか。母が捨て魔、よく言えば収納上手なのである。しかし母が唯一手が出せなかったのが子供の机の中。大人から見ればどーでもいい物が後生大事にしまってある。そういう訳でうちはミョーな所で物持ちがよい。物持ちの筆頭は妹で、自分が子供の頃使っていたオモチャのネックレスを自分の子供に与えて遊ばせている。25〜30年前使っていたオモチャがまだ完全な形で残っている。結婚後、ずっと大きな屋敷住まいならともかく、狭い社宅住まいの時代があって4回も引越しした事を考えると、よく捨てずにいたものだと思う。それはお世辞にもお宝と言えるような物ではない。当時、文房具屋や、駄菓子屋で売っていた子供の小遣いで買える程度のネックレスである。妹の家にはまだわけのわからない古い物がたくさんあるのかもしれない。

私は何年か一度「捨て魔」の虫が騒ぎだす。なので時々大掃除して捨ててしまうことが多い。そんな私も捨てずに持っていた物があった。「森永ハイクラウン」というチョコレートのオマケのシシリー・メアリー・バーカーの妖精カード。このチョコは約25年前100円位で、子供のオヤツにはけっこう高かったので、自分の小遣いで買ったものではないだろう。何か好きな物を買っていいよ、と言われた時に買って、カードを捨てずに取っておいたものと思われる。このカードに関しては古いカードの方が、新しいカードより印刷の具合や紙質など味があっていい。今では、小さな額に入れて部屋に飾っている。

私が実家からアパートに引っ越した時は机の引出しを抜いて運んだので、ガラクタはそのままついてきた。パソコンの机を買った時に古い勉強机は捨ててしまったので、机についてきたガラクタは捨てるか片付けるかしなければならなかった。机を捨てた時、文房具などよく使う物は新しいパソコンの机へ、捨てる物は捨て、捨てられないガラクタや手紙などは箱に入れておいた。オマケの妖精カードは第1回の危機をクリアした。2回めの危機は引越しである。家が広くなるので、ガラクタの中でも飾り物などは出せるかもしれない。そこでも持って行くか捨てるかふるいをかけた。それでも生き残ったカードなのだ。もう当分捨てられることはないだろう。


物持ちがいいといえば、今、とても長持ちするものを作っている。野ざらしで5年はもつ洗濯ばさみの紐。作るのは独立してから3回目だ。作り方は簡単、「レコード巻」という名前で売られている、平らなヘロヘロビニールの荷造り紐を極太のかぎ針で鎖編みにするだけ。それを洗濯ばさみにつけるのだ。

たいてい洗濯ばさみの方が先に朽ちて(日光でボロボロになって折れる)しまうので、洗濯ばさみに直にくくりつけないで、取り外せるように紐を通しておくのがコツだ。この紐、風呂場でもカビが生えないので、風呂のタワシや風呂時計、タライなどを吊るす紐としても便利だ。カビてもまた作ればいい。

洗濯ばさみに紐がついたのを買えばいいと思うかもしれないが、あの紐は結構よく切れる。洗濯ばさみはまだ使えそうなのに、紐が切れて使えなくなる事が多い。それに取り付けて使ったのが事のはじまり。レコードテープはどこの家にもあるだろう。極太かぎ針1本(手芸屋さんは400円位)の出費で5年も野ざらしで持つ洗濯ばさみの紐が作れる。機会があればお試しあれ。(紐を編む時指が痛いので、コシの弱いレコードテープの方が楽です。)洗濯ばさみ、そう高い物ではないのに、何で完全に朽ちるまで捨てられないんだろう…。


いつかいるかもしれない、と思って押入れの奥にしまい込み、そのまま出番のない物は多い。しかしそれを捨てるのも大決断。先日、引越しの時に捨ててしまったと思われる物が必要になった。しかし必要になってから買ってきても間に合う。大切なのは捨てる勇気だ。押入れにため込むのがリサイクルではない。捨てるべき物は捨て、「収納スペースのリサイクル」もリサイクルのうちだと思う。

目次へ ガラクタ展2001月10月号へ