スキヤキ、肉まんに変身


私は実家に電話をした時よく言う。「お母ちゃんにかわって。」最近父が電話をとることが多いが、父は「なんでわしじゃだめなんだろう。」と思っているかもしれない。でも実際、父じゃだめなのだ。

母から、スカートを急いで縫ってほしいから時間のあいた日に布を取りにきてほしい、と電話があった。それで取りに行く日の夕方電話を入れた。
私「今日、仕事の帰りに布をとりに行く。」
父「夕御飯はいるのか。」
私「5分で食べられる物があれば何か。」
(私は5時15分に仕事が終わって、7時に用事があったので、6時ごろ実家につけば急いで食べてギリギリかな、と思った。)
父「そうか。今日はスキヤキ。」
父と私の話はこれだけだった。私は「スキヤキでも一生懸命5分食べれば、お腹太るからいいか。」と思った。

その日、実家に行くのに手間取り、いつもなら30分で行けるのに50分ぐらいかかってしまった。そして実家の台所に入るなり驚いた。いやに閑散としている。母もノンビリしている。「もしかしてスキヤキは終わって、私のだけとってあるのかな。」と思っていたら、父が空の鍋を持って来た。

私「えーッ!!!、今からー?!」
父「何時に来るか言わなかったじゃないか。」

私は実家についたら5分で食べてトンボ帰りのつもりだった。今からスキヤキを作っていたのでは5分で食べるどころかできてもいない。父は母に「5分で食べられるものならいる」事を言ってなかったのだ。当然母は何も準備していない。私はこういう注文をよくするので、母が聞いていたら同じ材料で野菜炒めにするなり、スキヤキを早く始めて私のをとっておいてくれたりしたはずだ。

仕方がないのでごはんだけもらって、家で何か作ろうと思って電器がまを開けるとまだ未完成。私が急いでいることが伝わってなかったので、ごはんのスイッチも遅く入れたのだろう。ちゃんと伝わっていれば電話を受けてすぐスイッチを入れれば50分もあったのだ。できているはず。何も食べないで帰ろうとすると、母があわてて冷蔵庫から肉まんを出してくれたので、それを食べた。私は「今日はスキヤキ。」と聞かされただけで、完成品を見ることもなく帰った。こんなのなら、最初からごはんいるかって聞くなよー。

これだから大事な話は母に直接言わなければダメなのである。

…この話を別の所に書いたのだが、どうもよそのお父さんも同じらしい。伝言の肝心な所が抜けているのだ。世のお父さん、がんばれよ。


うちの父は若い頃から病院が大嫌いだ。風邪をひいてもなかなか病院に行かない。日給月給(月1で給料をくれるが、仕事に出た日しか給料は出ない)なので、何日も家で休んでいられたのでは生活ができない。早く病院に行って、さっさとキリをつけてほしい、と母が思うのも無理はない。「病院に行かないのなら仕事に行け。」と鬼のような言葉をかけて送り出す。しかしそのぐらいでないと、家にいて風邪薬も飲まず、ズルズルいつまででも休んでばかりなのだ。

全てのお金を母がやりくりしているので、父は自分が1日休む事が河村家にとってどの位損になるかを全く考えてない。有給休暇があればそんな事を気にすることもないのだろうが、日給月給の外での仕事は雨の日が多いだけでも大幅に収入減なのだから。(このような状況でも、母は家計簿をつけていなかった。それで家計が舞えていたのだから、それはそれですごいのかもしれない。)

具合が相当悪いのか、父がどうしても休ませてくれ、と言った時には「それならすぐ病院へ行け。」と母に家を追い出される。それで渋々病院に行くのだが、父は肝心の風邪薬をもらって来ない。関係ない腰痛の薬をもらってきたり、風邪で病院にいったのに風邪だと言わず、なぜか健康診断だけ受けて帰ってくる。そこでまた母に叱られる事になるが、もっともである。何で病院で自分の症状が言えないんだろう。子供じゃないのに。

やっぱり病院でも母がついていかないと、まともに治療してもらえないのだ。

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