1回轢かれにゃわからんか


家は団地の中なので、交通量も少ないのだが、団地を出ると国道。この国道、朝夕は大変なラッシュ。夜はやや交通量が減るとはいえ、見通しのよいまっすぐな道なので車がスピードを出す。かわいそうだが猫、亀、犬、鳥、いろんな動物が轢かれていたりするのも珍しくない。

1回、私も人を轢きそうになった。夜9時過ぎ、フラワーアレンジメントの帰りだった。アレンジは長い足つきの花器(チューリップの花の形ような感じ)をシートベルトでくくって助手席に固定、ひっくり返さないよう、そろそろ走っていた。後ろに車が来たら左に寄って先に行かせ、トロトロ、マイペースで行こうと。

家まであと1キロというところでアクシデント発生。酔っぱらいがちどり足で国道を横断しているのだ。私は急ブレーキをかけた。いままで注意深く運んできたフラワーアレンジメントはシートベルトから抜けて吹っ飛び、花は折れるし車内は水浸し。私が制限速度を下回る超スロー運転をしていたからよけられたけど、他の車なみの速さで走っていたら、と思うとぞっとする。

酔って夜中に道路の真ん中で寝ていて轢かれた話も聞くが、ドライバーのほうがかわいそうだ。日本は泥酔者に関する免責が少なすぎると思う。


信じられないような無謀な歩行者は酔っぱらいばかりではない。近所の国道には猛者がたくさんいる。ひとつはお年寄り。朝夕のラッシュ時、渋滞で止まっている車の間をぬって横断するのだ。近所の国道には横断歩道と次の横断歩道までの間隔が500m以上ある所もあるが、無謀横断老夫婦の横断ポイントは20m先に横断歩道がある所。降りたバス停の所から向かいの歩道へ一直線に横断するのだ。一気渡り切れず、センターラインに立って、反対車線の車が切れるのを待っている時があるが、恐れて反対車線の車も止まる。それが当然だと言いたげに堂々と国道を横断していく老夫婦。猛者である。

他にもいる。小学生だ。それもこの前まで幼稚園児だった子。集団登校の習慣がないので、チビッコ同士が遊びながら道路を渡っていく。ラッシュ時には左折の車が直進の歩行者の列が切れるのをイライラしながら待っている。慣れないお母さんが交通整理に当たった時など最悪。直進の子供を貯めないで来る子来る子全部通していたら、1台も左折できないまま信号が変わることも。交通整理がいないラッシュ時、左折車もお人良しげに子供が渡り切るのを待っていたら、後ろの車に叱られそうな雰囲気。

そんな状況の中、とんでもない子がいた。傘をさして横断歩道を渡っていたのだが、いきなりバックしはじめたのだ。後ろからは他の子や自転車が来ているし、横からは左折しようと車が待っている。道路は危険な所だと誰も教えないのだろうか。何でそんな動きをするんだーーっ!。

逆に、身をもって道路は危険な所だと知っている子もいる。岩国にはもう1本交通量の多い国道がある。そこは車が多いだけではなく、結構スピードを出して通る。歩道や路側帯も幅が狭く、歩くだけでも結構怖い。その沿線の子供は誰一人道路で遊んでないし、歩く時も車に気をつけている。うちのまわりのバック小学生や無謀老夫婦のような感覚で歩いていると、何回轢かれても命が足りない。

他にも、小さな交差点をブッ飛ばして通る自転車。横から出てくる車は「歩行者や自転車が横からでるかも」と思ってそろ〜っと交差点から車の鼻先を出して、次に自分が道路を見渡せる位置まで出て、といった手順で大きな道に出る。確かに自転車は前しか見えないが、車の鼻先が出たところで気づかなければならない。でないと横から出た車に車道側に押し倒されてしまい、その上を直進車に轢かれかねない。ブッ飛ばし自転車はそんな事は何も考えてないようだ。車の免許を持っている自転車ライダーはそういう危機回避、予見ができるのだが、自転車しか乗らない者に無知ゆえの無謀運転が多い気がする。

1回轢かれにゃわからんか、とはドライバー側からの意見だが、歩行者側も轢かれずにすむ歩き方を考えてほしい。それは自分の身をまもる術でもある。轢いたほうも轢かれたほうも大きな傷を負う。歩行者と車は共存していかなければならないのだから。

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