2.鐘としての銅鐸

形から見て鐘の役割を果たしたであろうことは間違いない。一般には銅鐸は農耕祭祀の道具と見られており、木に吊るしてシャーマンが敬謙な祈りと共に銅鐸を鳴らすのを後ろで村人が恭しく礼拝している図をよく見かけるであろう。これは想像図にすぎないのであるが図で見せつけられるとそういうものかと思い込んでしまう。しかしよく考えてほしい。それ以後歴史の上で日本人の食生活の基盤になる稲作栽培に関する祭祀用の道具をそれほど速やかに忘れることがあるかどうか。いかなる政治用の道具であろうともせめて日本の何処かの祭りで残っていてもよさそうなものである。つまり銅鐸は農耕祭祀用の道具ではないということを示している。
ここでも航海に用いていたのではないかという推測が成り立つ。航海船団を持つ場合、それぞれの船が乱れず統率をとるために鐘を打ち鳴らす。これは陸上の兵法と同じである。打ち鳴らす回数をあらかじめ決めておけば海上乱れたとしてもすぐに隊伍を組み直すこともできる。古代人がこの事を考えなかったという方がおかしい。おそらく航海技術が発展すると共に精妙な航海方法に仕立て上げられたのに違いない。

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