「脳と墓T」養老 孟司、斎藤 磐根 弘文堂

風葬は死体を土葬や火葬にせず、ミイラにもしないで、自然の中に放置する埋 葬法である。林葬ともいう。単に腐敗し白骨化するのを待つ場合を、狭義の風葬 という。また動物に食わせる場合も加えて、広義の風葬とする。動物に食わせる 例としては、鳥葬が有名である。風葬の場合は、一般に墓を造らないことが多い 。
風葬の起源を知ることは難しい。捨てたのか埋葬したのか分からないことが多 いからである。儀礼としての埋葬を行う以前は、風葬に近い形であったと思われ るが、埋葬しようという意志があったかどうかは不明である。
貝塚などに放置された死体もあった。逆に貝塚に埋葬された死体もある。土葬 より古い埋葬法であった可能性が大であるが残念ながら証明できない。土葬と同 じかそれより古い埋葬法ということになるであろう。(途中略)

沖縄の一部では、死者を磯の海水中に漬けておき、魚などに食わせていたとい う。そして、波で洗われてきれいな白骨だけになってから回収し、岩壁に横に掘 った納骨場所に埋葬する。水葬であり、魚葬ともいえる。


P148-153
(風葬)

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