安部栄四郎記念館

 意宇川の上流東岩坂川をさかのぼると、山間の小集落、出雲和紙の里・岩坂別所に着く。
 松江藩祖松平直政は、越前から紙漉きの技術者を伴って松江に着任した。この紙漉き者中条善左衛門は、松江市野白に紙漉き場を与えられ、和紙は藩の専売事業として始まった。のちには仁多郡の馬馳、広瀬町の祖父谷にも御紙屋ができている。現在、出雲民芸紙の生産で有名なこの岩坂別所は、野白と祖父谷の中間にある。紙漉きにはコウゾやミツマタに適した土質と、豊富で綺麗な水が必要であり、加えて耕地に乏しい山間部で副業を必要とする経済的理由もあるが、岩坂はこれらの条件を満たしていた。明治に入り、粗製品濫造と機械製紙の出現により没落の一途をたどった。
 1968年人間国宝に指定された岩坂の安部栄四郎が、かって民芸運動の提唱者柳宗悦の励ましをうけ、民芸紙への方向を示したのが出雲和紙蘇生の第一歩だった。この出雲民芸紙は厚手の雁皮紙、楮紙、三椏紙に持ち味があり、素朴なあたたかさをもっている。
 その安部栄四郎の業績を称えて造られたのが安部栄四郎記念館である。栄四郎が漉いた和紙をはじめ、紙に関する貴重な資料とともに、栄四郎と親交のあった棟方志功・浜田庄司・河井寛次郎・バーナード・リーチらの作品が展示してある。記念館の隣には手漉き和紙伝習館があり、和紙づくりを体験することができる。

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八雲村公式サイト
:八雲村の公式サイト。観光名所、特産品などの情報が盛りだくさん。八雲村観光コーナーに阿部栄四郎記念館の紹介あり。


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