■音律と音階の科学(3): 2つの楽音の不協和曲線
今回は、「音律と音階の科学」における次の2つのグラフ:
(a)不協和曲線: 周波数差/臨界帯域幅と不協和度の関係を示す。
(b)臨界帯域幅: 中心周波数と臨界帯域幅の関係を示す。
を元に、
●2つの楽音の不協和曲線: 倍音を考慮した2つの楽音の周波数比と不協和度の関係
のグラフを作図するアプレットを紹介します。
楽器の奏でる音(楽音)は基本周波数の音(基本波)とその整数倍の周波数の音(倍音)が合成された音です。 従って、2つの楽音の不協和度を計算するには基本波だけでなく、楽器から出るすべての整数倍音同士の不協和度の総和を求める必要があります(計算方法は下記参照)。
・根音の周波数の入力については
音律と音階の科学(2): 2つの純音の不協和曲線と同様です。
・考慮する倍音の数(基本波を含む)を選択します。
・倍音の減衰率(振幅の減少率)を選択します。
・表示する周波数比の範囲を選択します。
・根音の周波数が平均律の周波数に一致するときは、上の画面上をマウスクリックすることにより、その位置に最も近い音と根音を同時に鳴らします。
周波数比 f2/f1が1と2の間で不協和曲線が極小(谷)になる位置を左から見ていくと、
およそ 1.2、1.25、1.33、1.5、1.66
であり、これらを分数で表わすと、6/5、5/4、4/3、3/2、5/3 となります。 即ち、「2音の周波数比が簡単な整数比になるときはよく協和する」という結果が得られます。
画面の上方にある「12音平均律(半音単位)」と書かれた所にある数字(60, 66, 72など)は、ピアノの中央のド(C4)を60として、半音単位で順番に割り当てられた「MIDIノートナンバー」です。 従って、半音の3、4、5、7、9倍の音程(伝統的な呼び名では、短3度、長3度、完全4度、完全5度、長6度)のときはよく協和することになります。 特に完全4度と完全5度は、完全1度(同じ音=ユニゾン)、完全8度(1オクターブ離れた音)と合わせて完全協和音程と呼ばれ、また短3度、長3度、長6度に短6度(8半音)を加えたものは不完全協和音程と呼ばれています。
[ 計算方法 ]
2つの基本波f1、f2(f1≦f2)に対してn倍波まで考慮するものとし、その振幅は順次kを掛けた値に減少していくものとします(減衰率)。例えば、基本波f1については
周波数 振幅
1・f1 1
2・f1 k
3・f1 k2
・
n・f1 kn-1
さて、f1側の周波数:i・f1の音とf2側の周波数:j・f2の音の不協和度は次の2つに分けて考えます。
(1)j・f2の音のために i・f1の音がもたらす不協和度: d1
d1 = F1 (j・f2/i・f1) = ki+jFa ((j・f2 - i・f1)/Fb (i・f1))
(2)i・f1の音のために j・f2の音がもたらす不協和度: d2
d2 = F1 (i・f1/j・f2) = ki+jFa ((i・f1 - j・f2)/Fb (j・f2))
ここで、
Fa (冉/b): 周波数差/臨界帯域幅と不協和度の関係(冉<0のとき、Fa = 0)
Fb (f1): 中心周波数と臨界帯域幅の関係
従って、f1、f2 を基本波とする2つの楽音の不協和度は
dis = F2 (f2/f1) = ij(d1 + d2)
ここで、這狽ヘすべての(i, j)の組み合わせについての総和
で計算できます。
(注1)「音律と音階の科学」では、根音周波数f1=261Hz(C4)で減衰率=0.9、6倍音まで考慮した不協和曲線が示されています(図37、図39)。
(注2)マウスクリック時に再生される音は予めサウンドバンクに登録されたものであり、画面で設定された倍音の数や減衰率とは無関係です。
(注3)ピアノの中央のド(middle C)はト音記号付きの五線譜では下第一線上のド(下のド)です。
(注4)このプログラムはJavaで書かれています。音を鳴らすには、Javaの実行環境(JRE)下にサウンドバンクファイルが必要です。
C:¥Program Files¥・・・¥Java¥jrexxx¥lib¥audio\soundbank.gm
このファイルがない場合は下記よりダウンロードして下さい。
サウンドバンクファイルのダウンロード
[参考文献]小方厚著「音律と音階の科学」(講談社発行)
音律と音階の科学(4): 3重音(3和音)の不協和曲面
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