朗読劇は、サントリーホール 小ホールの担当に配属された28歳の清掃管理会社の新人清掃員、有谷の業務日誌とそれに返答を書く、係長(後の部長)笹倉と大ホール担当(後の係長)真壁の3人のやり取りでなりたっています。 小ホールで「椿姫」が上演されます。2月、6月、9月、12月の4場にわかれて。 はじめとそれぞれの月の間とにソプラノの田村さんがアリアを歌います。 有谷がある日、女子トイレで見つけた落書き、それは椿姫を見にきた「椿」という女性のものでした。 彼女はいわゆる「遊んでる」女性で、現在22歳、高校時代には援交の経験もあります。 そんな彼女がパトロンの中年の男にねだって2度目に椿姫を見にきた時、中年男とホール前にあるコンビニで派手にやりあい、相手が怒って帰ってしまいます。そんな彼女に声をかけたのがコンビニのバイトをしている音大生23歳の古田君。彼女は彼に恋をします。 6月、再び椿の落書きが同じ場所に。 二人が付き合い一緒に椿姫を見にきていて、その日は彼の実家に遊びに行くことになったと書かれてありました。幸せ一杯の二人、そんな内容でした。 が、次に有谷が見つけた落書きは、とても悲しい内容でした。彼の家に遊びに行った椿は、彼の両親に歓迎されます。が、夜中、彼女が泊まっている客間に彼の父がやってきて、昔、椿が援交した相手だと言うことがわかります。そして、息子との別れを迫るのです。彼が大好きな椿は、父を尊敬しているという彼の言葉に別れを決心します。 9月、椿の落書きは彼女が体を壊して入院していて、今日は外出許可をとって見に来たこと、検査の結果がよければ最終日に来ることが書かれていました。 そして別の日、男子トイレには「3ヶ月前に別れた女の事が忘れられない。なんでだろ?どうせ遊んでた女だから俺のことなんて覚えてないだろうけど」と落書きが。 12月、再び椿の落書き。そこには彼女がもう長くはないこと、でもどうしても見たかったので病院を抜け出して見に来たことが書かれていました。同じ日、男子トイレにはもう一つ落書きがありました。 すべての誤解が解けた、成田椿という女性をさがしてる、という古田の書き込み。彼の口癖が「アレ?」と 言うことでついたあだ名が「アレ古田」。彼女が椿姫で彼がアルフレッド、そうまるでオペラの椿姫のような 二人。その二人をめぐり合わせるため有谷が奔走します。 新人の彼を厳しく指導し導きながらも、暖かく見守る笹倉、そして何事もそつなく上手にこなす真壁。 日誌は係長が閲覧することになっているため、9月に笹倉が部長に昇進した時点で、真壁に返答者が変わります。 有谷が子猫を見つけ餌をやってることを日誌に書くと、「餌をやるな」と戒めながらも現場にきた際、その猫を見かけ家に連れ帰る笹倉と、野良犬を見つけたことを書くと保険所に連絡した真壁。 椿と古田の事を気にする有谷に注意をしながらも、ここぞ、という時に「全責任は俺がおうから」と有谷の勝手を許してくれるよう真壁に頼む笹倉。有谷の努力が身を結んだことをにおわせ朗読劇は終わります。 このエピソードが中心の業務日誌ですが、その中にそれぞれの人柄がうかがわれるエピソードが盛り込まれ、 笑いを誘っています。 剛君が読む内容がそのまま本になり1部1000円で販売されておりました。 開演前は一人一部限定で、終了後まだ残っていれば販売するので2部欲しい人はその時に、との事でした。 アリアはそれぞれの場にあった「椿姫」からの曲が選ばれて歌われていました。 アリアの歌詞の今はステージの上の方に字幕が出ていました。 剛君は最初の方こそ固かったものの、表情豊かにそれぞれのキャラクターを演じ分けていました。 時に額にしわ寄せ、眉を下げたり上げたり、日誌に落とした視線をときには上げたり。 所々かむところがあったものの、その表現力はなかなかのもので、個人的には笹倉さんが私は好きです。(*^^*) ただどうしても気になってしかたなかったのは「ふ」で始まる言葉が口笛のような「ひゅー」と音を伴うこと。「だ行」が「ラ行」に聞こえるところもあったなぁ。 で、果たしてこの話はハッピーエンドなのでしょうか?よくわかりません。 ただ、12月が終わり「ぱたん」と日誌が閉じられ、アリアが歌われ古田と再会し、お互いの気持ちが通じ合った二人、にもかかわらず椿は亡くなる、そう匂わされ、1月、立ち上がり元気に「蝶々婦人」が始まること、落書きのあった女子トイレに主演の田村さんが花束を備えてくれたことが書かれています。 そこで朗読は終わり、剛君がお辞儀をし田村さんを迎え、「乾杯の歌」を高らかに歌います。 が・・・なぜに?こんな明るい曲をこの場にもってきたのでしょうか?確かに、オペラを知らない人にも 耳慣れたこの曲で、ちょっとほっとした気分にはなるかも知れませんが。 この曲は本来「椿姫」の最初に歌われる人生の最高潮を歌ってる歌じゃないんでしょうか・・・ねぇ? 終わってからなんとなく違和感があるなぁ・・・って思ったんですが。 |