九寨溝・黄龍旅行記(後編)

(2000年8月)


4日め(8月20日) 九寨溝〜黄龍〜茂県

川主寺 今日も日程がきつい。朝6時45分には九寨溝賓館を出発し,黄龍に向かう。すでに下痢などで体調を崩している者が数名出ている。今日は4000mの山越えがあるのに先行きが心配だ。
約100q離れた「川主寺」という街で小型のバスに乗り換えなければならないということなので,まずそこを目指す。 途中,チベット族の女性がヒッチハイクしようというのか手を振る光景を何度も見ているうちに,昨日の疲れからか,そのうち眠ってしまった。

環境破壊 目が覚めたのが8時半,トイレ休憩にガソリンスタンドに立ち寄ったとき。ここから10分も走れば,そこはもう川主寺だった。黄龍と松藩(成都方面)との道路が分岐している街である。バスの運転手が黄龍までの道の様子を尋ねたら,我々の大型バスでも行けるということだったので,このバスに乗ったまま黄龍を目指すことにした。
距離にして約40qだが,山越えの悪路を走る。川主寺の街を出たところで,舗装した道はなくなり,砂利道か土の道となる。全線に渡って拡幅工事中である。外貨獲得を急ぐのか,工法は,山を削り,その削った岩石や土砂を谷側へ落として道を広げただけの環境破壊道路である。

40分ほど走ったところで,雪山(標高5588mの雪宝頂)が見えてきた。10時過ぎには,峠に着き,トイレ休憩。こんなおんぼろトイレでも有料かよ。しかも1元(街の2倍)。
雪宝頂 峠のトイレ

黄龍入口 10時40分に黄龍の駐車場に着いた。調子の悪い3人をバスに残し,ほかの者は元気に出発。土産物屋の並ぶ参道を抜けて入口に着いたのが11時過ぎ。入場料は「繁忙期1人80元」とある。ここから少し歩いて,黄龍の碑のあるところから約2時間の自由時間とする。高地なので,無理をせずに各自がそれぞれ自分のペースで見学せよということだ。

ここからは,見所をいくつか写真で紹介しよう。
迎賓彩池
最初に「迎賓彩池」(標高3199m)がある。 いきなりエメラルドグリーンの棚田で出迎えだ。
飛瀑流輝
「飛瀑流輝」(標高3233m)
蓮台飛瀑
「蓮台飛瀑」(標高3267m)

この辺りから登りがきつくなってくるぞ〜。
洗身洞
「洗身洞」(標高3281m)
金沙舗池
「金沙舗池」(標高3281m)

黙々と坂道を上っていると途中で息が苦しくなる。立ち止まってはミネラルウォーターを飲み,また歩く。高山病に効く薬はない。とにかく水分を取ることと,過激な運動を避けること。それさえ気をつければ大丈夫だ。
盆景池
「盆景池」(標高3307m)
姿夢映彩池
「姿夢映彩池」(標高3391m)

中国の人は,ポーズを決めて写真を撮るので,きれいな撮影ポイント場所をなかなか譲ってくれない。こっちは,きれいな風景を撮りたいだけなのに・・・

争艶池の案内 天気が曇りで写真がもう一つパッとしない。「争艶池」(標高3400m)で,デジカメの液晶画面で確認しながら写真を取り直していたら,12時半になっていた。 まだ,この上には見所がいくつか残っているが,次の「黄龍中寺」までは,あと922mも歩かねばならない。 集合時間に間に合わなくなるので,残念だがこれ以上登ることはあきらめることにした。
ガイドの李さんがいたので聞いてみたら,2人ほど,さらに上の方へ登って行ったので,ここで帰りを待っているらしい。 「争艶池」は,入場券にも写真が載っているとおり,黄龍の中では有名な池で,時間のない人でも,ここまでは,来てほしいポイントらしい。
争艶池 争艶池
話をしていると,上まで行った健脚の2人が戻ってきたので,いっしょに山を降りることにした。聞いてみたら,寺までは 行けず,途中でひきかえしたとのことだ。結局,旅行団のうち,「争艶池」まで登った者は5〜6人しかいなかったみたいだ。

李師餐庁 14時に黄龍を出発。朝来た山越えの道を引き返す。 15時45分,川主寺の「李師餐庁」で遅い昼食。半数くらいバスの中に残ったままで,食べに来ない。 今夜の宿泊場所,茂県のホテルまでは,まだ150qあるのに,この先大丈夫かいな。 結局,茂県賓館に着いたのは,20時10分だった。

高山病か強行日程か車酔いかよくわからないが,体調を崩した人が今日だけで7〜8人出た。 主に女性と若者が倒れ,じいさん方はピンピンしてバスの後ろで騒いでいた。よくわからんな〜。 反省点として,黄龍あたりでもう1泊すれば日程も余裕が出るし,黄龍の観光も上まで全部見れていいと思う。 今度行くときは,現在拡幅工事中の道路が全通しているだろうから,時間はかなり短縮されるだろう。 でも,その分観光客が増え,汚されていくんだろうな。
汚れで気になった点がもう一つ。「争艶池」と「姿夢映彩池」の水を湛えた皿の所々に黒い沈殿物があった。旅行団の中に水質検査のプロがいたので聞いてみたけど,原因ははっきりしない。 イオウになにか金属塩が反応したか,富栄養化により微生物が繁殖したものと推測されるらしい。次に来たときに黒いものが増えていたら要注意とのこと。今回はPH試験紙しか持ってきてないから水が中性ということは確かだが(それにしてもよくそんなもの持ってきてたなあ),それ以外は断定はできないらしい。水が汚染されているのでないことを祈ろう。


5日め(8月21日) 茂県〜都江堰〜成都

GSのトイレ 茂県賓館を7時に出発。 今日の予定は,ここから140q成都方面に戻り,都江堰を見学する。宿泊は成都だ。 途中,対岸の道路建設のため,ダイナマイトを爆破するとかで一時道路が通行止めになった。 ダムを造るということだが,そしたら今の道路はなくなるの?
8時半に中国石油のガソリンスタンドの立派なトイレで休憩。5つ星のトイレなのに5角しかいらないとはうれしい。 8時45分,九寨溝に行くとき大渋滞した狭いトンネルを,帰りは難なく通過した。

露店 1時間ほど走って,高そうな指輪を売る店でトイレ休憩。コースになっているので,バスが寄らなければならないんだろう。 トイレだけ済ませ,店の前の広場の露店で羊肉串(シシカバブー)と土豆(ジャガイモ)串を食べた。(どちらも1元) 10時過ぎに出発。 途中,今度は石をたくさん積んだトラックが脱輪し(側溝にタイヤが落ちる),大渋滞。(これも中国。あせってもしかたないさ) 11時半に都江堰市内のレストランに着いた。

都江堰市長と 都江堰市は,広島県の大竹市と来年春までに姉妹都市の縁組をする予定である。 この縁組の仲介をされたのが,広島のH産業の社長さんで,その社長さんのお嬢さんが,今回,我々の旅行団の中にいる。 そういうわけで,都江堰市長が,「非公式で会ってもよい」ということになり,お嬢さんを含め代表5人が,市長を表敬訪問した。 写真右の白い服を着た女性が都江堰市長で,左から2人目が団長です。
レストランに残された我々は,早めの昼食を取り,ホテルの売店を冷やかしに行った。 首に飾るとすてきな,岷江のきれいな石を1個10元で売っていた。 「まけてよ」とたのんだが,ホテルということでなかなかまけてくれない。そうこうしているうちに出発時間がきた。

13時10分,午後の観光のスタート。 料金所を通り,都江堰の水利施設を見学に行く。
最初に高台から全景を見る。向こう側が外江,手前が内江。間にある中州の先端が魚嘴(ぎょし)と呼ばれ,水を外江と内江に分けている。 李冰と李二郎がこの灌漑と洪水調節の両機能を持つ多目的水利施設を造ったのは,紀元前3世紀の秦の時代というから驚きだ。
造福万代
石段を降りていくと,ふもとには,二人をまつる「二王廟」が建てられていた。二人の功績を讃えるケ小平の『造福万代』の大きな壁文字に「なるほど,うまいほめかただな。」と感心しながらさらに下へ降りると, 内江の左岸側(上流から見て)へ降りて来た。少し歩いたところにある有料のつり橋を渡れば中州まで行ける。 つり橋の上から内江の流れを見ただけで引き返し,今度はバスに乗り15分ほどの離堆公園に行く。
中州と魚嘴
下流側

宝瓶口
離堆公園には,伏龍観という道教の寺院がある。ここから,都江堰という古代の巨大水利施設の機能を間近に見ることができる。
外江と内江を分けただけでは,分けた水が内江から外江にまた戻るだけで余り助けにならない。 李冰と李二郎は,成都盆地へ灌漑用水を送るため,内江の喉に当たる部分の岩山を切り開いて水路を造った。その水路の口の部分が「宝瓶口」(写真上)である。普段は内江の方が流量が多く,成都盆地を潤している。
そして,彼らは洪水調節のため,内江と外江の間に「飛沙堤」(写真下)という浅堤を造っている。大雨で河川の流量が増した時には,内江の水が外江にオーバーフローして流れ込む仕組みだ。 李さんの説明に加えて,ダムに詳しい団員のSさんの解説付きで,わかりやすかった。ずいぶん昔のことなのに,よく考えて造ったもんだ。
飛沙堤

15時45分,都江堰を離れ,成都に向かう。 16時15分に成灌高速に乗ると,40分で錦江飯店に着いた。 夕食まで時間があるので部屋で休憩しようとしたら,トラブル発生。 バスルームの引き戸(1Fだけ引き戸なんだな)が重くて動かない。レールが外れているんだろう。 服務員を呼んだら,工事のおっさんを連れてきた。それでも直らず,結局,部屋換えすることになった。 スルーガイドのYuさんに電話をしたら入浴中で,自分でフロントへ行ってくれという。「なんちゅう旅行団かいな!」と,ぶつぶつ言いながらも私のつたない中国語でフロントで話をする。 なんとか,8Fに部屋をかえてもらったが,それにしても,このフロント,こっちが中国語でしゃべっているのに,なんで,英語で話しをするんだ。 それと,同室のKくん(高校生)。私が一生懸命交渉している間,ずっと部屋でテレビを見ていたろうが。 まったく,最近の若いもんは!

今日の夕食は,麻婆豆腐。「陳麻婆豆腐」の本店に行く。バスで15分くらいのところだ。 麻婆豆腐は,日本人にとって,唐辛子の辛い「辣」よりも,山椒のピリピリした「麻」が苦手なのだが, それほど辛いとは思わなかった。日本人向けに余り辛くしなかったんだろうか? 土産に買った「麻婆豆腐の素」1箱6元(4袋入り)を帰国してから食べたら,これは辛かったよ。 家族が誰も食べないから,一人で食べる羽目になりました。
陳麻婆豆腐 麻婆豆腐

ホテルに戻ってから数人で夜店に出かける。 ホテルのすぐ前を南北に走る人民南路に絵や掛け軸を売る店が出ていた。5年前と比べて数がグッと減っている。 余りおもしろくないので,横の道に入ると,雑貨の露店がたくさん並んでいた。切手に硯,置物から何でもある感じだ。「毛沢東語録」を買おうと思ったが50元だって!高いからやめたよ。10元なら買うって言ったのに,交渉不成立。1冊持ってるからいいもん。 適当に切り上げてホテルに戻ることにした。


6日め(8月22日) 成都〜上海

クレヨンしんちゃん 午前中は,市内観光。 8時にバスは出発し,武侯祠,杜甫草堂をまわる。 私は5年前に行ったことがあるので,看護婦のHさんと中学校のM先生と一緒に別行動を取らせてもらって市内散策に行くことにした。
錦江賓館から人民南路を北上し,天府公園の毛沢東の像を見てから,さらに北の「熊猫商城」(パンダショッピングセンター)まで行ってみようということになった。 途中,食料品店やブティックやスーパーマーケットで寄り道。 娘への土産に買った「コアラのマーチの詰め合せ」が20.9元,「クレヨンしんちゃんのスナック菓子」は2.2元だった。 「熊猫商城」へ着いてびっくり。なんと,まだ建設中でした。んも〜。地図にちゃんと書けよな〜。

漂亮媽媽 そこから順城大街をブラブラ南下し,人民東路のデパート銀座へ。 デパートで,張芸謀監督の『一個都不能少』(邦題『あの子を探して』)とコンリー主演の『漂亮媽媽』(日本未公開)のVCD(どちらも20元)を買った。(一応,「中国映画のコーナー」の開設者でもありますもんで・・・) その後,タクシーに乗って,昼食場所である四川省博物館へ行く。 みんなと合流し,昼食後,成都空港へ行き,14時35分発の四川航空で上海へ。

外灘夜景 16時50分,上海虹橋空港に着く。まず,上海工業展覧館で買い物をし(ここは空港の売店よりも高いので,二度と買わないぞ〜),一旦,宿舎の上海国際貴都大飯店に荷物を置きに寄り, ホテルの近くの静安賓館で上海料理の夕食をとる。中国国際旅遊公司の徐副社長が挨拶に来られた。去年,生涯学習フェスティバルで広島にも来られており,団員の中にも知っている人が少なからずいる。
夕食後,バスの中から外灘の夜景を見てホテルに帰る。

7日め(8月23日) 上海〜福岡

剣舞 朝6時40分,早起きしてホテルの近くの静安公園へ散歩に行く。 いるいる。朝早くからたくさんの人が,太極拳,剣舞,老人ディスコ,秧歌踊り,鳥の散歩などをしている。 日本語のうまい中国人が寄ってきて,はさみを取り出し,即興で私と同行のK君の顔の切り絵を作ってくれた。その後,自分は画家で日本に絵の勉強に行きたいから,是非自分の書いた絵を1000円で買ってくれろと言う。「ははん」と思い,丁寧にお断りした。 それから,ホテルに戻って朝食を食べ,9時半に上海博物館へ見学に行く。

zun 上海博物館は,1952年開館の中国古代芸術博物館である。96年に人民広場に移転され,近代的なミュージアムとしてオープンした。建築面積は3万8千u,収蔵品は12万点もあるという。中は,古代の青銅器,彫刻,陶磁器,玉器などいくつかの部屋に分かれているが,一番の見所は,やはり1階の古代青銅器室でしょう。 電話の受話器に似た有料の解説器械を借りれば,日本語の説明を聞くこともできます。写真撮影は自由。フラッシュをたかずに撮れるデジカメが絶対便利。ただ下から光を当てているものが多く,いい写真がなかなか撮れなかった。掲載の写真は,「ZUN」と呼ばれる酒を暖めて飲むためのもの。(春秋晩期)
11時半まで2時間の見学時間をもうけたが,とても全部は見れなかった。また次に来たときに続きは見ることにして,上海空港へ急ぐ。 MU513便は,14時40分,定刻より55分遅れて上海を飛び立ち福岡に向かった。(待ち時間に上海空港で肉うどんを食べたが,55元もするんですね。)


忘れがたき中国旅行 四川省 九寨溝・黄龍旅行記(前編)
* 「九寨溝」に関する情報は,「中国いろいろ」の「コラム・雑学コーナー」にも載っています。併せてご覧ください。

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