内モンゴル・緑の大草原と青い空(後編)

4日め(8月3日) パオトウ〜四子王旗

ホテルを7時半に出発。360キロ離れた草原に向かう。 途中,10時半頃,ガソリンスタンドで休憩?と思ったら,赤い派手な服を着た旅行社のお姉ちゃんが 車でやって来た。 事務局長のHさんと団員2人の計3人が仕事の都合で先に帰国するため,ここでお別れするらしい。 草原ツアーを目前にしての帰国は,さぞ残念だろう。 3人と別れた後,バスは一路,大草原を目指す(あと140キロ)
一面の大草原の中に色とりどりのパオがいくつも見えてきた。四子王旗(ししおうき)である。 民族衣装を着た女の子が出迎えてくれ,パオまで案内してくれる。 荷物を置いた後,先に昼食だ。骨付きの羊の肉がメイン料理だ。ナイフで肉だけ切り取って食べる。 ?頭が丸ごと出たのを見て,気分が悪くなった人も出る始末。?
民族衣装を着た女の子 パオ

昼食後,いよいよ草原で遊ぶ。 最初は乗馬。ガイドの兄ちゃんが馬の乗り方を教えてくれる。 馬には必ず左の方から乗って左の方から降りろと言う。 馬の右側に行くと,馬は恐怖心を起こして暴れるらしい。 モンゴル族の若者が引っ張って誘導してくれるので安心だ。
次はラクダ。シルクロードに行った団員は,敦煌の鳴砂山でラクダに乗ったことがある。 それを思い出し,ここでも乗ろうとすると,ラクダが泣いて嫌がって立とうとしない。 今日はもう何人も観光客を乗せて疲れているんだろうか? 女性の団員が「かわいそう〜」と喉の辺りをなでてやっていた。 ラクダはあきらめて馬車(ラクダ車)に乗る。
乗馬 ラクダ車

そのあと,遊牧民の家庭を訪ね,本物のパオを見学させてもらった。 我々の宿泊するパオは下がコンクリートで固めてある観光用だ。 中は小奇麗で布団もあるし,何も不自由しない(トイレと洗面は共同のものとなるが・・)。 本物のパオは少し違い,生活の匂いがする。 そこは新婚さんのパオで,入口で奥さんが出迎えてくれた。 中でモンゴル茶(バター茶?)とお菓子をご馳走になる。
パオ外 パオ中

それから,草原の小高い丘にある敖包(オボウ)を見に行く。 直径20〜30cmの石を2〜3m積み上げているもので, 元々は遊牧民が、草原で放牧する時に方向を確かめるため、 少し高い場所に石を積み上げて目印として使っていたものらしいが, 後には土地の神様を祭り、祭祀を行う場所に変わっていったという。 敖包の周りを時計回りに3回まわって、小石を高いところに投げ, 旅の安全をお願いした。

お祈りの後,そこで西瓜を食べ,パオのところまで又戻る。 アトラクションはまだまだ続き,観光客を退屈にはさせない。 草原で若者のモンゴル相撲が始まった。 勝者が肩を怒らせて前かがみに飛び跳ねながら喜びを表現する姿(ワシ踊り?)が面白い。
そのあとは,競馬レースや地面に置いたお金を馬に乗ったまま走りながら拾い上げる技を見せる。 うまくいったら拍手喝采。若者が順番に挑戦し,成功した者が今日の戦利品としてもらえる仕組みだ。
相撲 競馬

その後は,夕食まで自由時間となる。 日が暮れるまでまだ時間がありそうなので, 草原をあてもなく歩き回り,ただ広大な大草原をぼんやりと眺める。何をするわけでもないのだが, 日頃の喧騒を忘れさせてくれ,自然と心が落ち着く。

酒
夜は大食堂で宴会だ。 宴が進むと勝手に歌を歌う人が出てきて,とても賑やかだ(うちのガイドの兄ちゃんも又歌っている)。 民族衣装を着たスタッフが各テーブルを順番に巡り,一人一人にを注いで回っている。 断ってはいけないそうだ。 ガイドの兄ちゃんが酒の飲み方を教えくれた。 杯に注いだ酒に薬指を浸して,感謝の印として天・地・自分の順に3回はじき飛ばす。

食事が終わったら,今度は外で花火大会(爆竹)が始まった。 それに,きれいなお姉さんたちによる民族舞踊と, 馬頭琴の演奏による民族音楽でも楽しませてくれた。 ダンスを踊ったり,香港から来た若い女性グループのコーラスなどで夜遅くまで騒いだ。
そのあと,わが団の男性陣はパオに集まり,せっかくなので草原での宴会を催す。 上を見上げれば,手が届きそうに近い空に満天の星。 その星が大きくてきれいに輝いている。 メルヘン気分のままパオの中で寝入った。
民族舞踊 馬頭琴の演奏

5日め(8月4日) 四子王旗〜フフホト 

羊飼いのおじいさん
草原の朝は早い。 みんなで日の出を見に行った。 邪魔する山などない大草原なので,別に出かけて行って見なければならないこともないのだが・・・ 5時32分に大草原の地平線から大きな太陽が昇ってきた。みんな感激〜。
朝食を済ませ,草原を後にし,フフホトへ向かう。 途中で草原の中にポツンと一人立っている羊飼いを見つけ,「大地の子」の陸一心を思い起こして,バスを止めてもらう。 陸一心とは似ても似つかぬ日焼けして真っ黒な顔をしたおじいさんだった。 それでも皆なぜだか感激し,順番に記念写真を撮って握手してお別れ。 このおじいさん,いきなり大勢の日本人に取り囲まれて 写真攻めと握手攻めにあい,何がなんだか訳がわからなかったろうな。

バスはフフホトの市内に戻って来た。 フフホトは,内モンゴル自治区の区都で,モンゴル語で「青い城」という意味だそうだ。 昔から草原都市だったのだろう。 ここで一番見たかったのは,内蒙古博物館に展示されている恐竜の化石だったが, 来年(1997年)が自治区創立50周年に当たるため,現在いろんな施設を補修中で, 残念ながら,この博物館も補修のため閉館中だった。

王昭君の墓
それで,中国四大美女の1人・王昭君の墓へ行く。 絶世の美女で,紀元前1世紀の中ごろ,前漢の元帝の宮女に選ばれたが,絵師に賄賂を贈らなかったため醜くく描かれ, その絵を見た皇帝がこれなら匈奴との親和政策に用いても損はないと考え,匈奴の王に嫁がされて一生を送った悲劇の女性だ。 元帝は王昭君を匈奴に送ると決めた後で実際に彼女を見て,匈奴にやるのが惜しくて堪らなくなったとか・・・

五塔寺
その後,五塔寺に行く。 ここは清代に建てられたインド建築様式のラマ教寺院で, 正式には金剛座舎利宝塔という。 塔基,金剛座,宝塔の三つの部分で構成され,高さが16.5mだ。 1119体の仏が描かれたレンガをはめ込んである金剛座の上部に 五つの尖った宝塔が天に向かって突き出していることからこの名がついたのだろう。 昔はもっと規模が大きく,他にも建物があったらしいが,現在は,この建物だけが残っている。 暗くて急な階段を登れば金剛座の上まで行くことができる。 宝塔の壁にはめ込まれた仏の像に触れば病気にならないという言い伝えがあるそうだ。 しかし,今は,触ろうとしても触れない。 観光客がたくさん触って傷んだからだろうか,五つの宝塔の根元は金網のフェンスで囲ってあった。


6日め(8月5日) フフホト〜北京

朝8時30分発の飛行機で北京に戻る。 雨の中を歩いて北海公園の中にある「倣膳飯店」に行く。今日の昼食は満漢全席だ。 清の時代の服を着た女性が料理を運んでくれる。 いろいろ出たが,特にこれはって特筆すべきものもなかったような気がする。まあ,一度,体験すればいいかな。
満漢全席 清

この後,2グループに分かて行動することになった。 というよりは,本隊は元々,故宮と天安門の見学に行くことになっていたのだが, シンちゃんは,もう何度も行ったことがあるため,単独行動を 願い出たら,他にも賛同者があったので,その7人で別行動をとることになったものだ。 夕食は前門の全聚徳に集合ということを確認した後, 別動隊はタクシー2台に分乗し,宋慶齢旧居に向かった。

近代中国の父・孫文の妻で,夫の死後,その遺志を受け継いで新中国の成立に尽くすため 激動の中国を行きぬいた彼女が,70歳(1963年)から88歳で死去するまでを過ごした場所だ。 宋慶齢の暮らしぶりをそのまま残した展示と落ち着いた雰囲気の庭を巡りながら, 中国近代史に思いを馳せる。
宋慶齢
宋慶齢故居
メイベル・チャンの映画『宋家の三姉妹(97)』はまだ製作されてもいないが, 前年にNHKで「宋姉妹」という特集番組を見ていたので興味を持って見学できた。 右の写真は入場券(10元)からコピーしたものです。

次は,円明園に行く。 清の皇帝の離宮で,ベルサイユ宮殿を模して作った豪華な宮殿だったが, 第二次アヘン戦争(1860年)で英仏連合軍の徹底した略奪と破壊にあい, その痕跡を隠すため,火を放たれ三日三晩燃え続けた。 写真でよく見る,崩れ残った大理石の彫刻や石の柱のある廃墟跡へ行きたかったが, 園内が広くて地図もなく,探せど探せど辿りつけず,ついに時間切れであきらめた。
入場券

実演
タクシーで前門の全聚徳に行く。 映画『老店(しにせ)(90)』でも紹介された1864年創業の北京ダックの老舗である。 まだ本隊は到着していなかった。 本隊がくるまで,タクシーの運ちゃんがなぜか相手をしてくれた。 円明園に行く途中,本隊に付いている現地ガイドの庄鳳栄さんから, 集合時間が延びたという連絡が運ちゃんのポケベルに入っていた。 本隊が来るまで一緒に待つよう同時に指示されていたのだろうか? (北京の女性は強いから・・・)
お客様サービスなのか,焼きあがったダックを宴席まで運んできて,目の前で薄く切ってくれる。 食べ方を知らない人に教えてあげながら,満腹になるまで北京ダックを賞味した。
今日泊まるのは,北京の老舗ホテル・北京飯店だ。 五つ星ではないが,さすが雰囲気はいい。 王府井に行きたかったが,遅くなったので,外に出るのはあきらめた。 それなら,せめて有名ホテルの雰囲気だけでもしっかりと味わっておくか。


7日め(8月6日) 北京〜福岡

せっかく北京飯店に泊まったのだから,朝は少し早く起きて,同室のTさんと天安門広場へ散歩に行った。 すがすがしい朝だ。人民英雄記念碑や天安門などおなじみの建物をバックに記念写真を撮ってホテルに戻る。 10時45分発の飛行機に乗り名残惜しい北京を後にした。



内モンゴル・緑の大草原と青い空(前編)
忘れがたき中国旅行 内蒙古自治区

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