水中浮き。この不可解な小道具を無意識に使っている人をよく見かけます。
水中浮きは、実は非常に難しい小道具なのです。
状況に合わせて、必要に応じて使えば、非常に効果の高いものであるし、
必要の無いときに付ければ、食い込みを悪くする悪役にすらなってしまうのです。
私の考える水中浮きを使うべき時とその効果について、少々屁理屈を述べてみたいと思います。
CASE1:海が荒れている
海が荒れ気味で波高が高いとき、表層に浮かぶ浮きが波に煽られて落ち着かないときがあります。
当然、浮きの浮力を殺してやればある程度は防げるのですが、このような状況は水中浮きが効果を発揮することが多いのです。
表層の波の影響を受けた浮きは上下動してしまい、この動きが不自然に刺し餌に伝わってしまいます。また魚が刺し餌を食わえた(食わえようとしている)ときに、刺し餌に浮きが波で引っ張られるような力が働くと、違和感や警戒心を与えてしまい、食い込みが極度に悪くなります。
このようなとき、水中浮きをつけるとどうなるのか?
水中浮きはそれ自体大きな体積を持っているため、仕掛けに与える影響は大きくなります。
表層の波の影響を受けにくく、比較的安定した潮の中に馴染んだ水中浮きは、あたかも上下方向への動きにアンカーを打ったような形になります。すなわち、表層の浮きに仕掛けを引っ張り上げようとする力が働いた場合でも、それ自体が潮を捉えている水中浮きは容易に引きずり上げられることはなく、仕掛けが引きずり上げられなかった分、逆に表層の浮きの方が水中に引き込まれるような動きをします。
すなわち、浮きの上下動の動きが水中浮きで吸収され、刺し餌の安定性が保たれる訳です。
CASE2:2枚潮
表層と中層以下の潮の動きが違う、所謂2枚潮になるとがあります。水深のある波止などでは頻繁に遭遇する場面だと思います。
こんなとき、無造作に表層の潮の動きに浮きの乗せて流せば、刺し餌の在る層では流れが逆方向に動き、結果として刺し餌が舞い上がってしまう結果になります。表層の浮きの動きを止めてしまえばいいのですが、そうした場合も、道糸が潮の動きを受けているため、深場になるほど道糸が潮に押されて潮下に膨れてしまい、刺し餌の在る層は逆に潮が動いているのですから、やはり刺し餌は舞い上がってしまいます。
このようなとき、水中浮きをつけるとどうなるのか?
水中浮きが中層以下の刺し餌がある層の潮の動きに捕まれば、表面積の大きい水中浮きは潮の力を大きく受けて、仕掛け全体を中層以下の層の潮の動きの方向へ引っ張ろうとします。表層の浮きや道糸の上層部は、表層の潮の方向に仕掛けを引っ張ろうとしますが、水中浮きの力と相殺されるため、引っ張る力は小さくなります。これにより仕掛けの浮き上がりを押さえることができるのです。
CASE3:浮きが潮を捉えにくい
当たり浮きに細身で表面積の小さい浮きを使った場合、潮受けが小さいため、道糸を引っ張って潮筋を流れていくことができない場合があります。
これは、普通の円錐浮きを使っていても、風が強い場合などは同じ事です。
こうした場合、仕掛け全体の質量を上げ、また表面積を大きくすることにより、潮を確実に捉え、道糸を引っ張りながら潮に乗って流れていくことができます。
思ったように潮に仕掛けが乗らないときなどは、水中浮きをつけてみると見違えるように潮に乗り始めることが多々あります。
代表的なケースを3つほど上げてみました。
水中浮きの機能が理解できると思います。水中にアンカーを打つ。そんなイメージでいいのではないでしょうか?
ただし、波静かで、2枚潮でもなく....そんな時に水中浮きを使うとどうでしょうか?
魚が刺し餌を喰い込んで移動しようとしたとき、水中浮きに掛かる潮の抵抗まで魚には伝わってしまいます。明らかに違和感が増えるのです。また例えば魚が真下に引き込んだ、とすればどうでしょう?水中浮きは遊動状態にセットされていますから、錘の機能も果たしている水中浮きにより浮力が相殺されないままの浮きの浮力がそのまま魚に伝わってしまいます。これも抵抗が増えるだけです。
それでは、水中浮きはどんな場合でも使わない方がいいのでは?という議論が生じそうですが、釣りは結局確率の問題なのです。そのフィールドの条件を照らし合わせてみて、どちらが魚に違和感を与えずに済むか?を考えて選択すればよいのだと思います。
ですから、単に遠投したいから...といって重量を稼ぐために水中浮きをつけるのはどうか?と思います。
それなら飛ばし浮きをつけた方が理に適っているでしょう。
水中浮きにも沢山の種類があります。特に大きさは気になるところです。
先に述べたアンカーとしての性能であれば、これは大きい方が当然効果は大きくなります。
しかし、魚に与える違和感が大きくなるという危険性も含んでいるため、大きければいいというものでもありません。
より刺し餌に近いところの潮の動きを掴ませたい場合は、ハリスに水中浮きを固定することになりますが、この場合はやはり違和感も考慮して、小さめの水中浮きを使うべきだと思います。釣研のあずき水中などはそのような使い方がし易いでしょう。
私自身、全く食わないときに水中浮きをつけたらいきなり爆釣になった、という経験も実際の処何度かしています。
ポケットに忍ばせておいて、気になったら出してみる。そんな小道具のような気もします。
少し言葉足らずのような気もしますので、また気付いた点があればまとめ直してみたいと思います。