撒き餌の遠投性と拡散性


撒き餌は現実的に磯からのフカセでは必要不可欠なものですから、撒き餌を語り出すと非常に長くなります。

今回は「遠投性と拡散性」について、例によって屁理屈を捏ねてみたいと思います。

撒き餌というのは困った奴で、撒き方次第では薬にも毒にもなってしまいます。
おまけに、チヌというのは更に困った奴で、必ずしも撒き餌の真ん中に刺し餌を漂わせればいい、というものでもない場合も結構あります。

この困ったチヌに合わせて考えていると、話がややこしくなりますので、この辺りは別に語ってみることにします。今日の話の対象は撒き餌に比較的素直なチヌ、ということでご了承下さい。

そうそう。私が遠投が主体の地磯中心に釣っていることも付け加えないといけませんね。


1.遠投性

遠投する場合、撒き餌の”まとまり”易さ、というものを考えていかないといけません。
まとまりは、粘りけと水分量により特性付けられます。

オキアミだけを撒くと、当然粘りがありませんから、まとまり難く、遠投するにはかなりのコツが必要となります。私もオキアミだけでは思うように飛ばせません。

つなぎとなるのが、袋詰めの粉末状の集魚剤であったり、糠であったりするのですが、集魚剤にも遠投に向いたまとまり易いタイプ、バラケ易いタイプ等ありますから、選択は必要です。

例えば、遠投したい、と思って、チヌパワーV9遠投+チヌ500遠投 の組み合わせにしたとします。

遠投系の集魚剤は粘りが強いため、この組み合わせなら飛距離は稼ぎやすいと思います。

チヌ500は比重が軽いため、遠投浮かせで釣る場合良いのではありますが、遠投+遠投で撒き餌を作れば、どうしても拡散性が犠牲になってしまいます。

チヌ500遠投の変わりに、例えばオカラダンゴ等のバラケ性の高いものを使えば、着水後の拡散性はある程度確保できます。当然、投入時のまとまりも悪い訳ですが、現実的には水分量の調整で十分フォローできるレベルだと思います。

遠投を考えるにしても、2つ混ぜるのなら、どちらか一つを遠投タイプにするくらいの方が扱いやすいのではないでしょうか。


遠投を意識する場合の撒き餌の撒き方ですが、
基本は杓を振りきらないこと、だと思います。

まず、撒き餌を杓ですくい、バッカンの壁に押しつけて固めます。バッカンに叩きつけるようにして固めている人も多いようですが、そこまでやる必要もないと思います。叩きつけないと固まらないようなら、少し水分量が少ないのかも知れません。

水分量の少ない撒き餌を無理に固めると、着水後のバラケも犠牲になります。団子釣りを考えてみれば解るのではないでしょうか。またこの様な撒き餌は、杓を離れた後空中分解して、バラバラになりながら思わぬ方向へ飛んでいってしまうものです。

話が横道にそれましたが、杓は脇を締めて、肘関節を中心に使って真っ直ぐに振る。頭の後ろから振り始めはゆっくりと、頭の横を通過した後に力を込め、前腕と上腕の角度が90度となるくらいで止める。手首は返さない。肘で押し出してバシっと止める。これが基本となります。杓を振りきらないことで、撒き餌はまとまって飛びます。

更に遠投する場合、これに腰の回転を加えます。腕の振りに合わせて、腰の回転で肩を押し出すようなイメージになります。

下半身は杓を持った方の足に体重を乗せて、腰の回転に合わせて、反対の足にシフトウェートします。

と、別段変わったことをする訳ではありませんが、「遠くに飛ばしたい」という重いが強いと、どうしても腕の力に頼ってしまいがちになります。力めば力むほど、撒き餌は空中分解して思うように飛ばないものです。これは気付かないうちに肘が伸びていたり、手首を返していたりすることが原因となると思います。また脇が開いて杓を斜めに振るような形となるとコントロールも思うようにいかなくなります。

こんなときは、落ち着いて、杓を止めるときのカップの角度を上向きにする、つまり少し早めに肘の振りを止めるようにするといいと思います。時々脇の開きに注意することも重要です。

何でもそうですが、遠投するには45度の角度で投げるべきなのですが、力むことにより自然と角度が低くなっている場合が多いのです。経験の浅い方が撒き餌を足下近くに叩きつけてしまうことがありますが、これが顕著な例だと言えます。


2.拡散性

撒き餌に求められる要件の一つが先の遠投性であり、相反する要件の一つが拡散性です。
拡散性というのは重要です。遠投性は釣り手側の都合である場合が多いのですが、拡散性はチヌの都合?とも言えるかも知れません。

すなわち、チヌは撒き餌の漂うエリアの中で、撒き餌を拾い、その臭い等に食欲を刺激され、その結果そのエリアの中に同じように漂う刺し餌を口にする訳です。これはフカセの基本原理とも言えます。

釣り手側の都合(遠投したい)で拡散性を犠牲にしてまとまりのよい撒き餌を作ってしまえば、着水後、撒き餌の拡散する”面積”は当然小さなものになります。また速く沈んで、底に撒き餌が入りやすくもなります。

フカセ釣り、というものを考える場合、先にも言いましたが、撒き餌の中に刺し餌を漂わせるというのが基本ですから、撒き餌の拡散する面積が小さければ、その小さな範囲に刺し餌を漂わせるのは困難になります。

仕掛けは張りを作ることで、刺し餌、錘、浮きが一直線となるような形をキープしつつ、刺し餌を自然に沈めていくというのが理想です。そうした場合、刺し餌は撒き餌の中を斜めに通過する場合が多いのです。当然、理想は撒き餌の中に常に刺し餌を置いておければいいのですが、潮がかなり緩いとき、また逆にかなり速いときなどは思うようにいかないのが現実です。それは、刺し餌には道糸や浮きがついていて、これらが潮や風の影響を受けるのですからやむを得ない部分もあります。潮が止まっていれば一直線となるような形をキープしつつ沈めるためには、刺し餌が浮きの真下に入るまで、斜めに沈むのは致し方ないとも言えます。

また、表層と下層では潮の速さも違うのです。

つまり、ある程度の”面積”が無ければ、現実的には撒き餌の中を刺し餌が漂うような状態は作り辛いのです。


面積を大きくするには、着水後バラケ易い集魚剤を使うのは一つの手です。バラケ易い撒き餌は潮の流れに乗りながら、潮下へ拡散していきます。ある程度の流れがある場所なら潮下方向へはある程度の面積は得ることができます。

しかし潮が緩い、また止まっている場合や、遠投して、道糸が手前の潮の影響を受けるような場合には、やはり前後左右へ広がる面積が必要となってきます。

特に潮が止まっている場合、撒き餌はバラケ易いとはいっても水中で爆発する訳ではないのですから、基本的には真下に沈むことを考えると、思ったほど面積が確保できていないと思います。

であれば、意識的に面積を確保せざるを得ません。

投入時に撒き餌を拡散させつつ、そこそこ遠投する。そんなことを考える必要が出てくる訳です。

撒き餌をバラケさせて打つには、上述したのとは反対に、杓を振りきればいいのです。
そうすれば、撒き餌は前後にバラバラとバラケながら飛んでいきます。
これだと飛距離が少々犠牲になり、また入れたくない足下付近の潮に撒き餌が入ってしまうことが考えられます。

もう一つ、撒き餌をバラケさせて打つ方法があります。少々コツが要りますが、杓を振るとき、手首を捻るようにして、杓を斜めに切るように振るのです。これだと、ある程度飛んでからバラケる形を作ることが可能です。

もう一つ、これが一番簡単かつ効率的なのですが....
基本はまとめて打つ。ただし、小さなカップに少しずつすくって何度も打つのです。自分が欲しい面積を擬似的に何投も投入することで作り出していきます。拡散...ではないのですが、私はこれを中心に、上の二つを組み合わせてやっています。

当然、あまりバッカンの壁に強く押しつけて固めたりはしません。沢山すくって壁に押しつけると固まり易いですが、少量すくえば、当然押しつけても密度は高くなりませんので、固まらないのです。

遠投性の話にもなりますが、少量すくっても、杓を真っ直ぐに押し出せば、それなりに距離は出るものです。


と、なんだかとても分かり難い文章になってしまいました。もう少しビジュアルに頼った表現をすればいいのでしょうが、これは後々の宿題ということにさせて下さい。


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