■車の数学(19): 縦列駐車の完璧な公式

 ●駐車スペースの計算式
 英国ロンドン大学の教授が2009年12月11日、米CNNに対し、「縦列駐車の完璧な公式を発見した」と語ったとのこと。 この公式を使えば、駐車できる最小のスペースを算出できるとしています。
 この教授はロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ・カレッジのサイモン・ブラックバーン(Simon R. Blackburn)教授で "The Geometry of Perfect Parking" なる論文を発表しています。

 この公式は円や3平方の定理など、数学に関する初歩的な知識を使って導くことができますが、ここでは結果のみを示します。 式の導出過程に興味のある方は末尾の論文をお読みください。

駐車スペース(付加長さ)ΔL の「完璧な公式」
 自車の長さに次の長さΔLを付加したスペースがあれば駐車できます。

  ΔL = sqrt [ r2 - w2 + (w + f)2 -{sqrt (r2 - w2) - b }2 ] - w - f

 ここで、
  sqrt(..): 平方根
  r : 自車の最小回転半径(右旋回時は左前輪の回転半径)
  w: 自車のホイールベース
  f : 自車の前部長さ(前輪車軸中心から車の先端までの長さ)
  b: 駐車中の前車の幅

 この公式の前提となる駐車方法等は下記のとおりです。
  ・左右の車輪は車幅一杯のところに付いている(トレッド = 車幅)。
  ・道路は十分に広く、駐車直前に任意の角度で停止できる。
  ・先ずハンドルを一杯に切って(full lock)停止。
   −>それから駐車エリアにバックで車道左端に平行になる位置まで。
   −>次にエリア中央に真っ直ぐに前進して駐車完了。
  ・駐車エリアから出るには上記と逆の手順による。

 この公式を見ると、駐車スペースΔL の計算式に自車の幅が含まれていないことがわかります。 ちょっと意外な感じがするかもしれませんが自車の幅は無関係なのです。

 なお、論文では触れられていませんがバック時に後部が歩道エリアに入り込むため、車道と歩道の段差が大きい時、または車道の端に壁がある時には不適切です。 ただし、このような時には左側を少し開けて駐車すれば問題を回避でき、しかもΔLは若干小さくなることも理解できます。

 ●縦列駐車のシミュレーション
 各数値を指定して「Start」ボタンを押すと、縦列駐車のシミュレーションができます。
 前記「完璧な公式」による計算結果と図から得られる値がほぼ等しいことが確認できます。



Simon R. Blackburn: The Geometry of Perfect Parking(2009.11.30)

車の数学(1): 最小回転半径 "iCar Radius"
車の数学(2): アッカーマン理論曲線

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