■(続々)音の出所はどこ? [音源方向の推定と両耳間時間差]

 「音の出所はどこ?」「(続)音の出所はどこ?」において、2次元平面上に(比較的離れて)設置された3個のマイクに音が到達する時間差から音源位置を推定できることが示されています。

 ここでは図のように近接した2個のマイクに音が到達する時間差から音源の方向を推定する方法を紹介します。
sound_dir.jpg

 音源までの距離に比べて、2個のマイクの間隔(a)が小さい場合には、音源からマイクまでの距離(d, d+囘)の差:囘は次式で算出できます。
  囘 = a sinθ

ここで、音速をc(m/s)、2個のマイクに音が到達する時間差を冲(s) とすると、
  囘 = c冲

従って、
  sinθ = c冲/a

となり、音の到達時間差冲から音源の方向θが推定できます
両耳間時間差 (りょうじかんじかんさ)
 人間は左右の耳が丁度上記の2個のマイクに相当し、音が左右の耳に届くまでの時間差(や強度差など)から音の方向を判断しています。
 この時間差は両耳間時間差(Interaural Time Difference:ITD)と呼ばれています。

 例えば、左右の耳の間隔 a = 0.2m、音速 c = 340m/s として、真横(θ = 90度の方向)からの音に対する到達時間差 冲 は、
  冲 = a sinθ/c = 0.2 x 1 / 340 ≒ 0.6ms

となります。

 人間の頭部の横断面を半径(a/2)の円形とみなし、音源に遠い方の耳への音の到達経路を直線+頭部円弧と仮定すると、両耳間時間差 冲 は近似的に次式で表すことができます。
  冲 = (a/2)[sinθ + θ]/c

 先程と同じ数値[a = 0.2m、c = 340m/s、θ = 90度]を代入すると、
  冲 = (0.2 / 2) x (1 + 3.14/2) / 340 ≒ 0.8ms

 方向角θが小さい時は sinθ ≒ θ 故、この式と先程の式による結果はほぼ等しくなります。
[参考文献]
 1.Wikipedia:両耳間時間差
 2.東京電機大学 情報環境学部研究資料

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