■太陽光発電: SOLAR CLINICにおける発電実績の検討

 太陽光発電ユーザー支援サイト「SOLAR CLINIC」には、全国各地の登録発電所における発電実績等が紹介されています。
   (注)2012年2月末現在、約2,700か所が登録されている。
 ここでは、SOLAR CLINICにおける基準発電量と発電実績、Myサイトにおける基準発電量(理論発電量)について比較検討し、Myサイトでの基準発電量の妥当性を示しています。
 ●SOLAR CLINICにおける基準発電量の推定方法
 SOLAR CLINIC では、Erbsモデル(直散分離)/ Perezモデル(斜面日射量計算)に基づいて基準発電量(予測発電量)を算出しています。

   基準発電量(kWh) = 斜面日射量(kWh/m2) x システム出力係数 x パネル容量(kW)

 ここで、システム出力係数(年間を通じて一定値:0.7)は温度損失、パワコン変換効率、その他損失を総合的に加味した係数であり、一般的な方式(1例)との違いは次のとおりです。

各種係数(損失)
 温度損失パワコン損失その他損失総合出力係数
一般的な方式
(1例)
10%6%5%0.804
春・秋15%6%5%0.759
20%6%5%0.714
SOLAR CLINIC年間   0.700

 SOLAR CLINICではこの結果、一般的な方式に比べて基準発電量を平均8%程度低く抑えており、特に冬は両者に約13%の開きがあります。
 ●Myサイトでの基準発電量(理論発電量)との比較
 SOLAR CLINICの基準発電量を、Myサイト(http://www.enjoy.ne.jp/~k-ichikawa/)でのErbsモデルに基づく理論発電量と比較した1例は次のとおりです。
 ・システム容量: 5.36kW
 ・温度損失: 季節別に設定(上表)、 パワコン損失: 6%、 その他損失: 5%
 ・建物方位: 0度(南)、 屋根傾斜: 30度
 ・設置場所: 広島
 ・MyサイトでのErbsに基づく計算式

月別予想発電量(kWh、2011年)
 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月11月12月 年間
(0)通常の方法
(季節別係数/平年)
4424435395916475345726275135304324306,300
(0)通常の方法
(季節別係数/2011年)
5124776086285454335655635685574334416,330
(1)SOLAR CLINIC
(年間一定:0.7)
4284185495815154255445595214983723445,754
(2)SOLAR CLINIC
(季節別係数換算)
4914805956305584345555705655404033956,218
(3)Myサイト(Erbs)
(季節別係数)
4814525906275534415745625605323933896,154
(4)=(2)/(3)1.021.061.011.001.010.980.971.011.011.021.031.021.01
 (注)「通常の方法」とは、全天日射量に1961-1990年(30年間)の平均的な「月別斜面日射量/全天日射量比」を乗じて
     得られる斜面日射量に基づいて算出する方法。


 SOLAR CLINICの基準発電量を一般的な方式(季節別係数)での発電量に換算した結果も上表の(2)に示します。
 例えば、1月の基準発電量=428kWhに対して、
   428 / 0.7 x 0.94 x 0.95 x 0.90 = 491 (kWh)
となります。

 この換算値(2)と、Myサイトでの値(3)は2月に6%の差がありますが、その他の月は±2〜3%程度であり、また年間発電量では1%程度の差しかありません。 従って、両サイトでの発電量の推定値(予想値)はほぼ同レベルと考えられます。

 両者に若干の差が生じる原因として以下のことが挙げられます。
(1)Myサイトでは広島地方気象台の全天日射量の観測値をそのまま使用しているのに対して、SOLOR CLINICでは理論直達日射量や日照時間などから(別途作成した推定式を用いて)全天日射量を推定している。
(2)斜面散乱日射量の推定方法が異なる(等方性モデル <−> Perezモデル)。
(3)Myサイトでは積雪を考慮していない。
 ●SOLAR CLINICにおける発電実績
 基準発電量に対する各発電所の実績が月毎に公開されていますが、当然のことながら(上記理由他により)
    発電指数 = 発電量実績 / 基準発電量
はほとんど100%を越えています。

 下表は全国、広島県内、広島市内における2007〜2011年の平均、2011年単独の登録発電所の平均指数です。

登録発電所の月別平均発電指数
地域係数 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月11月12月 年間
全 国2007-11年年間一定111112115116112115111110111114117115113
季節別  96 98106107103113109108102105108100105
2011年年間一定115114119119115116115112115117120119116
季節別 100100109110106114113110106108110104108
月 別  99100106109107111113113110109108105108
広島県2007-11年年間一定104108114113111111107108107109115112110
季節別  90 94105104102108105105 99101106 98101
2011年年間一定114112123121117118115113113116119124117
季節別  99 97113112108115113111104107110108108
月 別  98 97110111109112113114108108108109108
広島市2007-11年年間一定111113121121115113108111113111127120115
季節別  97 99112111106111106108104102117105107
2011年年間一定115113125124118115114111115118121128118
季節別 100 98116115109113112109106109112111109
月 別  99 98113114110110112112110110110112109
 (注1)集計データ数は全国:2702、広島県:52、広島市:22 である。
 (注2)「月別」は、月別温度損失係数による発電量換算値。


 季節別値に換算した2011年の年間指数は全国、広島県、広島市とも108前後で、ほぼ同じ値になっています。
 また、月別温度損失係数換算の指数は、1月、2月を除き、年間を通じてほぼ一定となっています。
 1月〜2月に指数が下がっている最大の要因は積雪による発電不足と推測されます。

 また、次の表は広島県内の登録発電所の2007〜2011年における年毎の平均発電指数です。

広島県内の登録発電所の年月別平均発電指数
係数 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月11月12月 年間
2007年 年間一定105104105105102103 93 96 98104103103102
季節別  91 90 97 97 94101 91 94 90 96 95 90 94
2008年 年間一定 95102109108106107103105 98104108103104
季節別  83 89100 99 98105101103 90 96 99 89 96
2009年 年間一定 89104111111109106107103104104107100105
季節別  77 91103103101104105101 96 96 99 87 97
2010年 年間一定100111113112113110106111109108126113111
季節別  87 97104103104108104109101100116 98103
2011年 年間一定114112123121117118115113113116119124117
季節別  99 97113112108115113111104107110108108
 (注1)集計データ数は年、月毎に異なる。
 (注2)季節別換算値のグラフを末尾に掲げる。


 年々の機器の性能向上(温度損失減少やパワコンの変換効率UP等)に伴って発電指数が4年間に15ポイントほど増加していることが分かります。

 下表は温度特性に優れたSANYO(現パナソニック)のHIT太陽電池モジュールの各種損失係数です。
 SOLAR CLINICの基準発電量に比べて、年間予想発電量が約15%UPします。 このような機器の導入が進んだ結果、前述のように季節別値に換算した最近の年間発電指数の平均値が108前後になっているものと推察されます。

HIT太陽電池の各種係数(損失)
 温度損失パワコン損失その他損失総合出力係数
HIT太陽電池6%5.5%5%0.844
春・秋9%5.5%5%0.817
12%5.5%5%0.790
SOLAR CLINIC年間   0.700

 ●Myサイトでの基準発電量(理論発電量)の妥当性
 以上により、MyサイトでのErbsモデルに基づく理論発電量の考え方が(最近の機器の性能UPを除けば)ほぼ妥当であり、従来の(通常の)方法、すなわち日々の全天日射量に1961-1990年(30年間)の平均的な月別「斜面日射量/全天日射量比」を乗じて得られる斜面日射量に基づく理論発電量(予想発電量)よりも実際の月毎の発電量とよく合致することが確認できたと考えます。
  ここでは、主として広島での値について検討しましたが、他の都市(気象官署)については別途検討する予定です。

 HIT太陽電池のような温度特性に優れたものに対しては、それに応じた温度損失係数を用いることで実情に即した予測を行うことが可能です。

[参考] (SOLAR CLINIC の登録データを基に作成)
・11都道府県における2011年の月別平均発電指数(季節別換算値)
iSolarC1

・広島県における2007年〜2011年の月別平均発電指数(季節別換算値)
iSolarC1

・SOLAR CLINICにおける発電実績詳細

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