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藤忠ビルプロジェクト
2001/10/7-12/31 松江市天神町「藤忠ビル」で開催中
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月刊藤忠ビル通信


「藤忠ビルプロジェクト」に感じたこと
宮ノ前・N

第2号/2001年12月25日発行


古いものを守り維持していくのは大変だ。端からみているぶんに、それは昔を知る人にとっては古きよき時代の郷愁を誘うものだし、今の世代の人にとってはかえってオシャレにみえたりするものだから、なんとかその姿が残ればいいのに、などと軽い気持ちで思ったりする。でも、残ればいいのに、とたくさんの人が思いながらも、結局「しかたない」という言葉とともに多くの古いものたちは静かに姿を消し、やがて記憶からも忘れられていく。

そんななかで、この「藤忠ビル」も、やはりもうじき壊されていく建物なのだが、今までにはない形で、「最後の花道」を飾ってもらったしあわせなビルだと思う。藤忠ビルプロジェクトは、この建物に直接関係があったわけでもない、ただ単に松江の町並をつくってきたこのビルに愛着をもつ人たちが、ほとんどボランティアで集まって、期間限定でこのビルの最期を賑やかに彩り、少しでも多くの人たちの記憶に残しておこうというものだった。数ヶ月にわたって数多くのイベントが行われ、その度に多くの人たちがもうじき壊されるこの古いビルに集まり、それぞれ自分とこのビルとの思い出をつくっていった。関わっているスタッフの人たちに、「大変でしょ?」と問いかけると、みんな口を揃えて「好きでやってるから」と心底楽しそうに答えた。

こうした古い時代の建物を、誰かに向かって「なんとか保存したら」と口で言うのは簡単で、そしていざ保存が決まろうものなら、維持のためにかかる持主への負担は小さくない。さらに活用しようとすれば、新しいものをつくる以上のものが必要となってくるだろう。しかし、この藤忠ビルの期間限定という形での様々なイベントは、「とにかく多くの人の記憶と記録の中にその姿を残す」とい意味で、全く新しい形での、古き時代と現在の自分、あるいは自分と自分が暮らす街との関わり方なのかもしれないと思った。

こうして賑やかに「最後の花道」を飾った藤忠ビルも、やがて静かに消えていった多くの古い建物と同じように、わたしたちの記憶から忘れられていくのかもしれない。けれど、このプロジェクト期間中、このビルに集まった多くの人たちが共に過ごした時間こそが、何より大切であったように思う。やがて壊されていくピルに対する花道というよりも、今現在のわたしたちの心に残してくれたものの方がきっと大きいのだと思う。

以上、長期にわたるスタッフのみなさんの膨大な活動の一端と努力を、ほんのちょっと知るもののひとりとして、感じたことを書かせていただきました。最後に、スタッフのみなさんへ。期間中、カフェや、フラメンコのショーなど、たくさんのイベントを楽しませていただきました。すべて手作りの温かさのこもったイベントの数々、ほんとうにありがとうございました。


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