2.地理的な利点と航海技術


世界地図帳(旺文社より)


世界地図を見てみよう。
日本は海に囲まれた孤地である。このことは文化・文明の伝播から見て、ともすると大きな障壁になっているのではないかと考えがちになる。しかし古代において、海がどれほどわれわれに多くのものを運んできたかを検証すればするほど、この考えが過ちであることに気づく。ただ日本はこれまで農耕社会であり、江戸時代の鎖国をへているため、海からものを考えることに少なからず抵抗を感じる。

こうやって海から日本を見ると日本の特異性がいっそうはっきりとする。例えば、よく日本人は好奇心旺盛だといわれることがある。その好奇心の出所を海から捉えるならば、高度の文化・文明は海の向こうから来るという信仰にも似た感情がそれに当たっており、その感情が常に外から来る新しいものに目を向けさせ、ついには民族の特徴にまで至ったと言えるのではないか。海を隔てた大陸との適度な距離が、大陸上の国々にある逞しさや恐れなどの、お互いの国が持つ共通の感情とも距離を置け、良いか悪いかは別として日本特有の好奇心、国民的ヒステリーや変わり身の速さなどを身につけさせたともいえる。

私は遥か昔にこの海の力が出雲王国を形成する一端を担ったのではなかろうかと考えている。現在では出雲王国の存在を証明しようとするとき、「記・紀」等の文献、青銅器などの考古学的資料でもって立証しようとする向きがあるが、この海からの視点をはずしては出雲王国の存在は見えてこない。ここではそのことについて触れることにする。

海に面した交流 山岳信仰 造船技術 航海技術


戻る

次に進む