フランスの数学者 フーリエ(Fourier、1764-1830)は熱伝導問題の解析の過程で、「任意の周期関数は三角関数の和で表される」という仮定の下で、周期関数を三角関数を使って級数展開する方法(フーリエ級数展開)を考案しました。[参考文献]
フーリエ級数を非周期関数にも拡張したものがフーリエ変換です。
フーリエ級数やフーリエ変換に代表されるフーリエ解析は、複雑な関数を周波数成分に分解してより簡単に記述することができるため、音や光、振動、コンピュータグラフィックスなど幅広い分野で用いられています。
複雑な情報や信号をその成分(周波数)毎に分解し、その大小に従って配列したものを周波数スペクトル(あるいは単にスペクトル:spectrum)と呼びます。
スペクトルを用いることにより、例えば次のようなことが行えます。
・スペクトルを分析して、信号源を同定したり、特徴パラメータを抽出してパターン認識を行う。
・入力信号をスペクトルに変換して伝送し、それを受信側で元の信号に復元する。
・入力信号の中から、特定の成分を取り出したり、雑音を除去する(フィルタリング)。
さて、関数(信号)には連続関数(アナログ信号)と離散関数(ディジタル信号)があり、また周期性があるものと、周期性がないものがあります。 同様にスペクトルにも、連続スペクトルと離散スペクトル、周期スペクトルと非周期スペクトルがあります。
これらの関数(信号)とスペクトルの間には次のような相互関係があり、それらに対応して各種フーリエ解析と標本化(サンプリング)が存在しています。
関数(信号)、スペクトルの種類 と 解析法の関係 関数の種類 スペクトルの種類 解析方法 連続周期関数 離散非周期スペクトル フーリエ級数展開 連続非周期関数 連続非周期スペクトル フーリエ変換 離散周期関数 離散周期スペクトル 離散フーリエ変換 離散非周期関数 連続周期スペクトル 標本化(サンプリング)
ここでは、数回に分けて下記項目について順に記述しています。 フーリエ解析を直感的に理解できるように、各種アプレットを準備するとともに画像処理、音声データ処理、医療分野への応用なども取り上げています。
項 目 内 容 (1)フーリエ級数とは : 周期2πの周期関数のフーリエ級数の定義、フーリエ係数の求め方 (2)フーリエ級数展開を体験しよう : 各種の周期関数(周期 2π)のフーリエ級数展開を表示するアプレット (3)任意周期の関数に対するフーリエ級数 : 周期Tの周期関数f(t)に対するフーリエ級数展開の式 (4)複素フーリエ級数 : 周期Tの周期関数 f(t)に対する複素フーリエ級数 (5)フーリエ級数からフーリエ変換へ : フーリエ級数の極限としてのフーリエ変換とフーリエ逆変換 (6)フーリエ変換を体験しよう : 各種関数 f(t)のフーリエ変換を行い、結果 F(ω)をグラフ表示するアプレット (7)2次元フーリエ変換 : 2次元画像の変換などに利用される2次元フーリエ変換 (8)離散フーリエ変換(DFT) : 1次元&2次元の離散フーリエ変換(DFT)と逆変換(IDFT) (9)1次元離散フーリエ変換を体験しよう : 各種関数 f(t)の離散フーリエ変換・逆変換を行うアプレット (10)2次元離散フーリエ変換を体験しよう : 2次元離散フーリエ変換を画像データ処理に適用したアプレット (11)高速フーリエ変換(FFT) : 音声データ処理を行うアプレット (12)2次元高速フーリエ変換(FFT) : 画像データ処理を行うアプレット (13)フーリエ変換の医療分野への応用例 : CTスキャンの原理を体験できるアプレット (14)フーリエ変換を利用した音源位置の推定 : CSP法により音源位置を推定するアプレット