i- 太陽光発電所: 発電実績診断 〜発電量不足の要因別寄与率〜

 我が家の発電量が最寄りの気象官署(広島地方気象台)における実際の日射量から予測される発電量(理論発電量(注2))に対して、2011年10月以降若干低い傾向を示しています。 この傾向は広島市内の他家の発電実績でも見られます。

 この原因を究明すべく今まで検討してきた結果を踏まえて、現時点で考えられる種々の要因について各々の寄与率を割り出してみました。

 最大の要因は全天日射量から斜面日射量を推定(計算)する方法にあると考えています。 すなわち、発電量診断は通常、実際の全天日射量に1961-1990年(30年間)の平均的な「月別斜面日射量/全天日射量比」を乗じて得られる斜面日射量に基づいて行われますが、これが最近の気象状況あるいは広島の気象状況に合っていないと推察されます。

 Erbsモデル(あるいはMETPV-3モデル)を用いて、実際の時間当たり全天日射量から斜面日射量を算出・積算すると、広島では前記の通常の斜面日射量に比べて秋から冬にかけて最大10%程度低い値になります。 年によって多少のバラツキはありますが、傾向はよく似ています。

 下の表で、「季節別温度損失〜パネル面の積雪」の各要因を除去した発電効率は98%〜106%となり、システムはほぼ順調に稼働していると判断されます。  100%とのわずかな差は天候(日射量等)の地域差、気温差(−>モジュール温度差)による温度損失の違い、その他が影響していると考えられます。

 気象官署やアメダス点とその近隣地域における日射量の差については、NEDO/日本気象協会の研究資料「標準日射データの地理的分解能向上に関する調査研究(H18年)」の中に、「殆どの地域において、アメダス地点の日射量を代表値として利用することで大きな誤差は生じないと考えられる」(アメダス地点とその近隣地域における日射量の差)と紹介されています。

 温度損失については季節別または月別に損失率を設定していますが、実際のモジュールの性能と時間毎の気温変化に対するモジュール温度の変化を加味した発電量診断が必要なのかもしれません。
発電量不足の原因別寄与率(2011/6〜2012/3)
2011年2012年備 考
6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
(1)我が家の発電実績(注1)kWh472596572548519393343363352481ここ
(2)理論発電量(注2)kWh436568563557540413416427416476同上
(3)発電効率(実績/理論)= (1) / (2) %108105101989695828584101近隣データ
(4)発電不足= 100 - (3) %-8-5-1245181516-1 
(5)発電効率変動の
   要因分析(%)

 [-:Down、 +:Up]
季節別温度損失(注3)+30-3-4-1+2-1+10+3ここ
斜面日射量推定(Erbs)(注4)+4+30-1-4-8-11-10-6-5ここここ
パワコン特性(変換効率変化)(注5)-2-2-1-1-1-2-2-2-2-1ここ
パワコン特性(低照度時起動せず)-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2-0.2同上
モジュールの容量(公称->実際)+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5+1.5ここ
ビルトインタイプのパネル(温度上昇)-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5-1.5JIS(注6), Kyocera
周囲建物等の影-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8-0.8ここ
パネル面の積雪000000-2-3-5-0日々の記録より
上記合計   Σ+40-5-7-7-9-17-15-14-4 
(6)要因除去後発電効率= (3) - (5) %1041051061051031049910098105 
(7)その他の要因
 ・天候差、温度差
 ・設置時断線
 ・システムの経年劣化(注7)
 ・計量誤差(発電量)
 ・その他
= (6) - 100 %456534-10-25天候の地域差

電力モニタの精度
 (注1)我が家の2011年6月実績は6/1〜4(設置工事中)の未発電分30kWhを補正した値(442+30)。
 (注2)理論発電量の計算式はこちら
 (注3)モジュールの温度特性の詳細は不明。
 (注4)傾斜角/方位の実際(28.8/25°)と基準値(30/30°)の違いによる差(+0.3〜+1.3%程度)を含む。
 (注5)パワコンの詳細特性は不明であるが、メーカ提示の断片的情報を基に試算した。
 (注6)JIS C8907附属書3には、日射強度1kW/m2、風速3m/s時、屋根材形は屋根置き形に比べて5℃程度モジュール温度が高くなるとある。
     従って、温度係数 -0.4%/℃として、2%の発電量低下となる。
 (注7)モジュールの出力低下は10年で4%程度か、20年で1割未満との報告もあり。
i- 太陽光発電所: 日射量と発電量の関係(発電効率に関する考察)
i- 太陽光発電所: システムの更新
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