はじめに|概要|ビル今昔|ファサード|構造|地下室|細部|設計者・秋鹿隆一
■ファサード・デザイン
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コリント式の柱頭 |
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藤忠ビルのファサード・デザインは、コリント式の柱頭をもちいるなど、様式建築の厳格さを目指しながらも、庇のデザインや曲面を有する壁面など、モダンデザインの要素も兼ね備えている。コリント式オーダーは、アカンサスの葉をモティフとした柱頭が特徴的で、ドリス式、イオニア式といったギリシア建築の他のオーダーに比べて、装飾的意図が強い。松江において、ギリシャ建築のオーダーを用いたものとしては、現在のカラコロ工房、旧日本銀行松江支店がある。銀行建築を数多く手がけてきた長野宇平治の晩年の作であるが、様式建築のもつ厳格さが現れている。一方、水平線を強調する庇や曲面がモダンデザインの特徴を示すわけであるが、建築隅角部の曲面は、同じ天神町の福村喜十郎商店に見ることができる。スティックビルの向かいに現存するこの建築は、歴史主義的な装飾を配したモダンなデザインで統一されている。その明快さでは藤忠ビルを上回る。ファサードを構成する個々の要素のデザインについては、それぞれ面白いのだが、バランスが悪い。ぼてっとした、よく言えば重厚なデザインであり、竣工写真をよくよくみていると、寄せ集めのキッチュさがにじみ出てくるようである。しかしその存在感が天神町の町なみに彩りを与えてきたことは否めない。
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